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放送大がデータサイエンス講座開発、各大学で活用可能に

放送大学は各大学のオンライン授業に活用できる数理・データサイエンス(DS)・人工知能(AI)の講座を開発した。政府が全学生必修とするリテラシー(読解記述力)レベルの5講座を、数理・データサイエンス教育研究拠点コンソーシアム(東京都文京区)と連携して整備。活用しやすい15分単位の講義や産業人インタビュー、データ処理などを、放送映像の高い品質でインターネット配信する。多様な大学が放送大を活用する新たな仕組みで注目される。

新講座は各大学のオンデマンド型授業に組み込める有料のインターネット配信と、無料のBS(衛星放送)チャンネル「放送大学ex」で扱う。放送大は放送局でもあるため、映像制作のプロの手による魅力的な教材なのが強みだ。

1章45分を15分単位の講義映像と、小テストの組み合わせで設計した。そのため各大学の事情に合わせた部分活用や、放送大のLMS(学習管理システム)による受講者の進行把握が容易だ。団体での受講費用は5講座計40章、40人までで20万円と抑えた。修了を国際的な認証技術で証明する「デジタルバッジ」も発行できる。

数理・DS・AI教育は、政府の「AI戦略2019」に基づき、同コンソーシアムがリテラシーレベルのモデルカリキュラムをまとめている。今回はこれに準拠し、5講座のうち三つを放送大が、二つをコンソーシアムがそれぞれ作成した。

放送大は約400の大学と単位互換協定を結ぶ。しかし社会人の生涯教育が柱のため、追試など単位認定の救済措置に乏しく、活用例は少ない。DSではこのリテラシー講座の受講後に、放送大のプログラミングやAIの科目を単位互換で学ぶ形も、候補になるとしている。

日刊工業新聞2021年3月25日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
放送大学は国の資金が多く投入された私立大学で、放送局でもあるという超特異な存在だ。社会人職業教育というより、教養の生涯教育に重きを置い ている点が、いかにももったいないと以前から思っていた。それだけに、「全学部生にDS教育なんていったって、本学ではとても手がまわらない…」という多くの大学に向けて、講座を提供するという仕組みはぴったりだと感じた。費用設定も、5講座一揃いで学生一人5000円という、リーズナブルな設定だ。それでも予算が厳しいのなら、BSの放送大学exで、放送プログラムに合わせてチャンネルをオンにして視聴すれば、無料で学べるという仕組みでもある。今回の企画で、これまでの放送大学とは俄然、異なる注目が集まると期待している。

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