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発足約20年の「四大学連合」。壁の高い学際研究に挑む

東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学は1日、教育で進めてきた「四大学連合」の活動を研究連携に広げ、「ポストコロナ社会コンソーシアム」を開設したと発表した。新型コロナウイルス感染症による社会のニューノーマルをテーマに、壁の高い学際研究に挑む。学生や若手教員がウェブで議論するサロンなどボトムアップと、大型研究費獲得の戦略を練る理事クラスのトップダウンを合わせて推進していく。

具体的な共同研究テーマは定量的な嗅覚異常による新型コロナ診断法、ウェブを使った家庭訪問による環境の危険度把握、新型コロナ対応病院のコスト分析、法整備と各国社会システム比較などで一部スタートしている。医・工の技術、経済学のデータ分析の研究成果を、アジア各国のシステムに生かすといった総合知モデルの世界発信も目指す。

四大学連合は20年前に発足し、学生の単位互換が中心だった。事務局を務める東京医科歯科大の渡辺守理事は「これまで学長らが盛り上がっても研究現場までつながらなかった。そのため20年先も現役の若手教員などが、リードできるように設計した」と工夫を説明した。12日にウェブでキックオフシンポジウムを開催する。

日刊工業新聞2021年2月2日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
これまで学際研究が進まなかった理由として、東京外国語大学の中山俊秀理事は「分野により、特に理論レベルは前提も、問題意識も違うためだ」と会見で説明した。ボトムアップの共創・協創を実現するには、分野を超えて意識を共有する【現場】が必要なのだという。「幸か不幸か、新型コロナは社会の多様な面に影響し、学問の理論化の壁をともに越えていくことが可能になる」(中山理事)。これは総合大学でも同じこと。総合大学とエッジの効いた4大学の連合と、形態の違いを武器にして、互いに切磋琢磨してほしい。

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