東大が独自の接触確認システム、コロナ対策に有効か
東京大学工学系研究科は4月に、施設管理の研究と実践に取り組む「キャンパスマネジメント研究センター」を設立する。デジタル変革(DX)で、新型コロナウイルス感染症対応の安全性向上などを進める。設立に先立ち独自の接触確認システムの全学利用を開始した。二酸化炭素(CO2)濃度の変化から、エネルギーの無駄を抑えて対面講義の換気を制御する仕組みも動かし始めた。
キャンパスマネジメント研究センターは建築や換気、情報など東大工学系の知を活用し、空間の安全性や価値の向上、空間・土地の有効活用を図る研究組織だ。工学系で実証試験をして全学に広げるなど、実践的な活動に重点を置く。
一足先に、工学系教員を中心に開発した接触確認ビーコン(小型発信器)システム「MOCHA(モカ)」の全学利用を始めた。学内各所に設置したビーコン端末と、学生や教職員のスマートフォンで通信し、滞在履歴を記録し感染拡大を防ぐ。12月末に本格稼働させ、1月初旬に出た陽性の判定事例で活用した。陽性者の滞在場所と日時、匿名の同室者情報を確認。本人の記憶による学内行動履歴を補完した。
政府の接触確認アプリケーション「ココア」に似ているが、食堂の混雑情報や事務手続き対応など大学での幅広い用途が見込まれる。参加は任意だが、利用率8割を目標としている。
また、講義室の人員に応じた換気制御を導入。室温や湿度を整えた空気をやみくもに入れ替えるのではなく、収容人数と換気能力から算出したCO2濃度の変化をとらえ、それに応じた換気を行う。
さらに対面講義中に、外国から専門家がウェブ参加する場合の映像・音の高品質化など、デジタルインフラの技術開発も新センターのテーマだ。アフターコロナに学内ホールなどを、住民の交流拠点にする場合のDXや安全性向上も検討していく。