好みのクラフトビール自宅で簡単に、レシピ流通も狙う小型醸造装置が登場

キックスターターで60万ドル以上集め、プロジェクト成立

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さまざまな店のクラフトビールを自宅で楽しめるPico(PicoBrew提供)
 好みのブランドのクラフトビールを一度に5リットル、自動で手軽に作れる家庭用ビール醸造装置が登場した。元マイクロソフト副社長のビル・ミッチェルCEOらが2010年に創業した米ピコブルー(PicoBrew)の「ピコ」がそれ。クラウドファンディングサイトの「キックスターター」で10月末、20万ドルを目標に1台当たり販売予定価格のほぼ半額の499ドルから予約販売を始めたところ、残り1カ月を残し、わずか8時間半で目標額を達成した。現時点で調達額は60万ドル前後まで膨らみ、かなりの人気商品となりそうな気配だ。

 実はピコの前に、同社初の製品として卓上タイプのビール醸造装置「ザイマティック(Zymatic)」を2013年に発売。こちらもキックスターターで66万1000ドルを資金調達し、同ファンディングサイトの2013年の食品分野でもっとも調達額が多い製品になった。ピコほどは自動化されておらず、原料の計量といった作業は必要だが、一度に9.5リットルのビールが作れ、価格は1999ドル。現在までに1200台が売れているという。

 ピコはこのザイマティックのいわば小型自動化版で、麦芽やホップといった原料をレシピに沿って所要量分だけ詰め込んだ「ピコパック」というパッケージの形で供給し、操作を大幅に簡略化した。キックスターターでの注文分は2016年3月から順次出荷される。

 同時に、ピコとピコパックには、新しいビジネス展開の仕組みも盛り込んでいる。すでに契約している50以上のクラフトビール醸造業者や、「ホームブルワー」といわれる自宅でビールを醸造している300人以上の人たちのレシピをもとにしたさまざまなピコパックをネット上の販売サイト(BrewMarketplace)を通じて提供する予定だ。

 作り方はまず、ピコパックを装置にセットし、好みに応じて苦みやアルコール度数を設定するだけ。装置が個別のレシピをピコパックから読み取り、温度などの条件を自動制御する。こうしてビールのもととなる麦汁を2時間で作製。それを付属の発酵タンクに移し、ビール酵母を投入して5日から7日かけて発酵させれば、出来上がり。タンクからチューブ経由で金属製の樽に移して、あとはみんなで乾杯するだけ!

 クラフトビールは提供地域が限られているが、こうした仕組みで世界中にクラフトビールのブランドを展開できる利点があると同社ではみている。さらに、既存のザイマティックのユーザーを含め、自分のレシピをピコパックの形で提供することで個人がロイヤルティーを得る手段ともなる。

 例えばこれまでにも、スマートフォンで個人がアプリを販売するビジネス形態が生み出され、また3Dプリンターの登場で、フィギィア、アクセサリー、アートといった製品、あるいはそれらのデータを個人がネットで流通する新しい市場ができている。このビール醸造装置もスマホや3Dプリンターと同じように、醸造所に属さないインディー(独立系)の醸造家が開発したビールのレシピについて、流通市場の立ち上げを視野に入れている。

 フォーブズ誌によれば、米国でさえ、自家製ビールの消費量は全体の1%にも満たないという。逆に、だからこそ普及の可能性があるとも言え、作り方を簡単にしてさらにコストを下げれば、アプリ/3Dプリンター型の新しいビール流通のビジネルモデルとして広がっていくかもしれない。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

藤元正
モノづくり日本会議実行委員会

残念なことに、日本では免許を持たない者がアルコール度数1%以上の酒類を醸造することは法律で禁じられている。ということは、免許を持っている人がこれでビールを作って売ればいいということ。初期投資もそれほどかからなさそうだし(参考までサンプルのピコパックは4〜5個で米カナダ向けが100ドル)、誰かこの装置を買ってビール屋さんを始めてくれないだろうか。

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