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セールスフォースが富士フイルム、東レ、DNPの先行事例紹介!DXの波に遅れるな

産業界に強烈なデジタルトランスフォーメーション(DX)の波がやってきている。ただ、コロナ禍においてDXを先んじて取り組んでいた企業の業績回復は顕著に進んでいるものの、製造業のDXは他産業に比べ、遅れているのが実情だ。そんな中、セールスフォース・ドットコム(東京都千代田区、小出伸一社長、03・4222・1000)は7月に開催したウェブセミナー「Salesforce Live:Manufacturing」のオンデマンド配信を開始した。今回は同配信の注目講演の要旨を紹介すると共に、DX先行事例を見ていきたい。

以下で紹介する講演はセールスフォース・ドットコム主催の「Salesforce Live:Manufacturing」オンデマンド配信の中から、日刊工業新聞がDX推進の観点から選んだ5つの講演になります。
 

富士フイルムが考える「顧客視点のマーケティング」

 

富士フイルムの現在の主力事業の一つは化粧品などのヘルスケア領域だ。これらを支える技術は同社の旧社名にもある「写真フイルム」などのイメージングソリューションにある。写真事業で培った技術で参入障壁が高く、他社には追随できない領域へ多角化経営を進めた。

 

それでも、同社のデジタルマーケティングを担当する一色昭典マネージャーは「技術への絶対なる自信から、『いいものを作れば売れる』というプロダクトアウトの思考が強くなっていた」と語る。

 

そこで、導入したのが顧客の声を製品に反映させるマーケットインの思考だ。それまではグループ各社がデジタルマーケティングを担っていたが、統括するICT戦略室を設置。過去の成功事例や文化を持つ、各事業会社に対し、「KKD(=勘と経験と度胸)で得られた成功は再現性のあるものなのか?KKD(=仮設・検証・データ分析)で成功体験・成功事例をデータで可視化して再現性のあるものにしよう」(一色マネージャー)と呼びかけた。デジタルマーケティングの必要性を説いき、意識づくりから積極的に行ったのだ。一色マネージャーは「まだ道半ば」と話すものの、確実にノウハウは蓄積出来ているという。

 

講演では、同社の導入までの経緯やデジタルマーケティングを部門横断で浸透させた過程、そしてアフターコロナの展望も語っている。

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部門間を超えた連携、DXで実現を

 

本ウェブセミナーでは、部門間を超えた連携を実現するためDXに取り組む企業が登壇する。東レエンジニアリング(東京都中央区、岩出卓社長、03・3241・1541)と大日本印刷だ。

 

東レエンジニアリングは、2018年に全社業務改革プロジェクト「Top2020」を発足。同プロジェクトの目的は、従業員の生産性向上や働き方改革のためのIoT(モノのインターネット)活用を掲げた中期経営計画の達成、さらに将来の経営基盤強化につなげることだ。 そのためにツールとして同年には、営業とエンジニアを対象に「Salesforce」を導入。新型コロナウイルス流行後は全従業員が使えるようにした。コロナ禍という投資を抑制しかねない状況の中、同社が全従業員への導入を決めたのは情報共有の速さと応札案件数の増加にあったという。 それまでの紙やメールを中心にしていたコミュニケーションから、チャットを使い素早く情報共有をするのが一般的になった。その結果、案件の取りこぼしを減らしながら、人員などのリソースを最適に割り当てることができた。結果として応札案件数の増加という目に見える成果が出た。

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大日本印刷では、以前導入した独自開発のRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の失敗から、「各事業部の部分最適では、全社としての最適解を得られない」との考えから「Salesforce」の導入を決めたという。 同社の特徴は各事業部が組織として成果を出していくスタイルだ。そのため、各プロセスにおける適切なマネジメントは欠かせない。「Salesforce」を導入することで各プロセスのビジネス情報を可視化することができた。小さなミスを見逃さずに対処することで、欠品や不良品の減少につながった。 また、各事業部での成功事例を全社として共有することで、DXを進める意識を浸透させている段階だという。 講演では、先述の2社が導入後、全社としてどう意識づけをしたのかや活用法などを語っている。

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自社だけではなく、取引先や顧客ともつながる

 

製造業において、もはや1社のみで経済活動を終えるのは現実的ではない。特に海外からの部品輸入の停止は、最終製品の製造が出来なくなったり、製品が欠品することによる販売小売店への影響など多大なる影響を及ばす。

 

川崎重工業の米国子会社のKawasaki Motors Corp., U.S.A.では、全米に広がる多くのサプライヤーやディーラーとの情報共有を「Salesforce」で行っている。サプライヤーの生産やディーラーの販売状況を管理、共有することは同社にとっても有用だということだ。 サプライヤーから事前に部品の供給量を把握しておけば、もし欠品の恐れがある場合、他社から同じ用途の部品を仕入れる選択肢を考えられ、生産活動を滞りなく行うことが出来る。ディーラーの在庫が少なくなることが事前に分かれば、早めに納入することで欠品などによる販売機会をロスする懸念がなくなる。

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自動車においては、急速に電動化が進み、整備や販売店などの顧客との接点が少なくなってきている。今後は顧客のライフスタイルに合わせたアフターサービスを展開する必要があるだろう。この講演では、今後のアフターサービスを想定したデモを行う。

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業務をデジタル化することで、すべてが効率化されるわけではない。デジタルトランスフォーメーションとあるように、変革(=トランスフォーメーション)していかなければならないのだ。自社でのDXを検討されている方には先行社の事例からDXの浸透や活用法のエッセンスをつかんでほしい。

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