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インターンシップが変わる。コロナ禍が生む新たなうねり

【学生応援】ニューノーマルに生きる君たちへ #04
インターンシップが変わる。コロナ禍が生む新たなうねり

コロナ禍によってインターンシップに変化が起きている(写真はイメージ)

新型コロナウイルス感染症はインターンシップ(就業体験)にも影響を及ぼしています。一つはインターンシップのオンライン実施です。

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もう一つは例年の夏の実施から、20年は後ろにシフトした変化です。主対象となる22年卒の学部3年生は、例年と違う様子にまごついたことでしょう。さらに先輩の4年生の就活の様変わりを目にして、「今のうちにインターンシップで志望企業と相互理解を深めておきたい」との思いが強くなっているかもしれません。

産学協働イノベーション人材育成協議会(C-ENGINE)は、大学院博士課程学生らの研究インターンシップを実施しています。例年は、企業側と博士学生の交流会も手がけています。

東工大における企業と博士学生の19年の交流会(C-ENGINE提供)

ですが、今年は新型コロナで交流会は軒並み中止です。インターンシップの実施数も減ったのですが、その中で企業から数物系や情報への注目が高まる興味深い傾向を明らかにしています。

具体的には20年度のインターンシップで、企業と学生のマッチング成立約40人分のうち、学生の専攻分野をみました。その結果、数式やシミュレーションを使う数物系が30%、情報系は18%でした。過去4年間合計(約400人)は各17%、9%だったのに比べ伸びが目立ちます。これに対して本年度の電気電子系は5%、生物系は2%で、過去は各24%、10%だったのに比べて変化が著しいことがわかります。

要因の一つは新型コロナによる実施形態の変化です。対面が必要な実験系の中止が増え、遠隔実施のニーズに応えるオンライン主体の活動が、全体の3分の1になりました。もう一つは企業ニーズの変化です。ビジネスのビッグデータ(大量データ)解析や、人工知能(AI)の活用などが人気になっています。博士学生という高度人材向けのインターンシップのため顕著に出ている現象ですが、この傾向は修士学生や学部生でも頭に入れておくとよいでしょう。

企業と学生の交流は、例年のリアルの比重が今年度はダウンした(京都大学での交流会)(C-ENGINE提供)

一方、中長期視点で注目してほしいのは、インターンシップにおいて新たなうねりが起こっていることです。「インターンシップを採用に直結させたい産業界」と、「採用とは無関係の教育に位置付けたい大学」の長年のギャップが、解消されるかもしれません。

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新卒生の就活は時間がかかり、学業を妨げる問題があります。そのため産学は、活動の開始時期など巡ってしばしば対立してきました。近年はインターンシップでも攻防が続いていました。つまり企業はインターンシップを採用につなげたいものの、大学は産学協同の教育と位置付けるというズレがあったのです。「採用直結のインターンシップが可になると、これを皮切りに就活が長期化し、大学での学びがさらにおろそかになる」と大学側は心配しているのです。

けれどもここへきて、ソサエティー5・0時代に向けたIT技術にデータサイエンス、人工知能(AI)など、高度なスキルを持つ人材ニーズが急伸。そのためスキルを生かした特定の職務(ジョブ)を前提とする「ジョブ型採用」導入に、大手メーカーの一部が動きはじめています。

「ジョブ型採用」導入に、大手メーカーの一部が動きはじめている(写真はイメージ)

これは情報・理工学系を中心に、非常に高度なスキルを持った転職者などの人材市場で活況を帯びつつあるものです。このジョブ型採用に結びつくインターンシップであれば、学生は大学での高度な学びをした上で参加することになり、産学双方にメリットが生じることになるのがポイントです。

経団連と大学側の就職問題懇談会が共同運営する「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は20年春に報告書をまとめ、ジョブ型インターンシップの試行を打ち出しました。最初に動きだすのは、博士学生が数カ月にわたって研究を主軸に行う「ジョブ型研究インターンシップ」です。

まず情報や理工系分野を筆頭に、博士人材の企業就職をぐっと後押しするチャンスになるでしょう。これがその後、格段に人数の多い修士課程学生や学部生にどのように広がっていくか――。大学の学びと就活のバランスを整え直す転換期にさしかかっているのです。

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