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承認済みの白血病治療薬でパーキンソン病患者の症状改善、米大学が学会発表

来年にもアルツハイマー病含めた臨床試験開始
承認済みの白血病治療薬でパーキンソン病患者の症状改善、米大学が学会発表

(ジョージタウン大学医療センターの動画から)

 認知症の症状を持つ12人のパーキンソン病患者に対し、FDA(米食品医薬品局)で承認されている白血病治療薬を投与した小規模な臨床研究で、11人の認知機能および運動機能の改善が見られたと、米ジョージタウン大学医療センターの研究チームが報告した。うち1人の女性は自分で食事ができるようになり、車いすでしか移動できなかった1人の男性は歩けるようになった。さらに、言葉が使えなくなっていた3人は再びしゃべれるようになるなど、6カ月間の臨床研究を通して一部の患者で大幅な症状改善が見られたという。

 この薬剤は慢性骨髄性白血病治療薬として日本でも承認されている分子標的薬の「ニロチニブ」(商品名タシグナ)。10月17-21日までシカゴで開かれている北米神経科学学会(SfN)の年次研究会で成果が発表された。

 報告によれば、ニロチニブを投与された患者は体の震えといったパーキンソン病特有の症状が減り、さらにこれまでの薬剤を減らすことができたことから、ドーパミンを生成する脳の機能が改善したと見られるという。白血病治療の場合に比べ投与量が少ないため、深刻な副作用もなかったしている。

 ただ、今回の報告は有効成分を含まない偽薬(プラセボ)による比較試験を実施していない小規模な臨床研究であり、ニロチニブの価格がまだ高い(米国では白血病患者に対し月間数千ドル)といった課題もある。大規模な臨床試験でその効果が確認されれば、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症といった神経疾患を食い止める有効な治療法になる可能性がある。

 こうした成果について、研究を行ったジョージタウン大学病院運動疾患プログラム代表のフェルナンド・ペイガン准教授(神経学)は「25年のパーキンソン病の研究生活を通して一番わくわくしている」と感想を述べている。公共ラジオ放送のNPRによれば、同センターは、2016年にもニロチニブによるパーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経疾患について大規模な臨床試験の実施を計画しているという。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
以前、認知症をテーマにしたNHKスペシャルの番組を見ていたら、淡路島でアルツハイマー病の進行が遅い人たちが見つかり、脳梗塞の再発を防ぐ薬(シロスタゾール)を飲んでいる共通点があるということだった。ちゃんとした臨床試験が必要にはなるのだろうけれど、承認済みの薬でこうした別の病気への「適応」の可能性が見つかることは、非常にありがたい。

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