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DXで大学教育の効果を高めよ。文科省が90億円で新事業

文部科学省は2021年度に、デジタル変革(DX)で大学生らの教育効果を高める事業を始める。オンライン授業に対面の議論を合わせた反転授業、バーチャルリアリティー(VR=仮想現実)での実験・実習、学修履歴・健康管理・就職の一貫支援などのモデルを確立する。システム整備に使える年1億5000万円を最大3年間、大学・高等専門学校の60件で支援する。21年度予算の概算要求で90億円を計上した。

大学などのオンライン授業は今後、質の向上や総合的なDXが期待される。例えば反転授業はオンラインで知識習得をした上で、対面の演習をする手法だ。また、全大学の半分程度が導入する学習管理システム(LMS)では、ビッグデータ(大量データ)解析が可能。多くの学生がつまずく部分を突き止めたり、各学生の習熟度に合わせて指導したりするのに有効だ。

これからの課題はオンラインによる公平な筆記試験、実地の長期留学に替わる国際交流プログラムなどだ。さらにオンラインと対面のハイブリッド化で、特色ある地域の教育プログラムや社会人教育を魅力的にしたり、学生支援のデータ統合で経営改革につなげたりする期待もある。

新事業「プラスDX」ではこういった意欲的な取り組みを支援する。DX化と学修者本位の教育の両立が、優れた大学の一つの指標になってきそうだ。

日刊工業新聞2020年9月30日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
今春のオンライン授業開始は、「小規模大学も含めてよく、なんとか実現できたな」と思ったが、これはポストコロナ時代の最低限のラインにすぎない。登学も対面授業もこれまでより少ないのに、学費は同じとする以上は、より優れた教育効果を出す仕組みづくりが、どの大学にも求められる。

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