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早稲田大学が9月から密度4分の1の対面授業、ニューノーマルな教育方法に

早稲田大学が9月から密度4分の1の対面授業、ニューノーマルな教育方法に

教職員向けにオンライン配信など授業支援のセンターを充実(早大提供)

早稲田大学は新型コロナウイルス感染症対応で、9月末からの秋学期を座学のオンライン授業と、密度を従来の4分の1に抑えた対面授業を組み合わせて開講すると決めた。講義科目は録画視聴のオンデマンド型を基本とし、空いた教室で少人数のゼミやディスカッションなど演習科目を行う。学生の登校を週数日に抑えつつ、グループ自習室の活用で横のつながりを保つ。大規模大学の象徴だった、数百人が大講義室で授業を受ける形を大きく変える。同大の新たな教育方法が注目されそうだ。今週末にも発表する。

早稲田大学は新型コロナで授業をすべてオンラインとした春学期に対し、9月25日からの秋学期は通常の大学暦(スケジュール)を維持すると決めた。講義のみの座学はオンライン授業のうち、いつでも受講できるオンデマンド型で実施。学生は在宅か、7月上旬に始めたオンライン授業専用スペースで受講する。

対面授業は着席時の距離を1―2メートルに設定して行う。定員300人の教室で約70人、同1400人の大隈講堂なら約300人と制限される。ゼミなどに地方や海外から参加する学生のため、オンライン授業のうち同時双方向(リアルタイム)型併用を検討する。

時間割は各学部で細密に組んでいるため、各科目の曜日は変えずに教室を手配する。3密対策をしながらも学生同士で学びあうスペースの設置を強化。実験・実技の実習科目は「ポストコロナ」の段階で補講をし、在学の数年間で教育の質を確保するよう設計する。

対面授業の再開における3密対策は、大学によって厳密さに差がある。同大は学部やキャンパスで事情が異なる上、学生数が多い。そのため感染防止と教育の質の確保に向けて、他大学より慎重な対応と早期のメッセージ発信を行う。

日刊工業新聞2020年7月16日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「春学期・前期の授業は大半がオンラインだが、秋学期・後期は決めかねている」というのが、ほとんどの大学の現状だ。その中で早大がいち早く方針を示した。「あそこまでやらなくても、といわれるくらいでよい。それで初めて安全を確保できる」というのが、田中愛治総長を初めとする幹部の認識だという。コロナ対応について「やりすぎだ」「甘い」「方針決定が遅い」とさまざまな批判が錯綜するのはいたしかたない。その中で組織トップは、熟慮を重ねて決断し、ブレない強さが求められる。今後、明らかになってくる他大学の姿勢にも合わせて注目したい。

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