データサイエンスが老朽インフラを救う。北大など手法開発
北海道大学、東日本高速道路(NEXCO東日本)などは、データサイエンス(DS)による高速道路の橋の維持管理手法を開発した。データ分析ツールを使い、複数の点検データを組み合わせて状況把握するための研修を、NEXCO東日本の社員約235人で実施した。自ら分析項目を追加する上級者を含め、データを業務の意思決定につなげるスキル向上における研修効果も確かめた。
橋のひび割れなどの現場点検は目視やハンマー打診で行い、記録と写真から補修や次の点検の計画を立てる。日本は高度成長期に建設された構造物の老朽化が問題だが、インフラ維持管理の技術者が不足している。
北大は文部科学省のデータ関連人材育成プログラム(D―DRIVE)事業の取組機関として採択されており、DSを活用したインフラ維持管理の業務高度化で産学の共同事業体(コンソーシアム)を運営している。この一環で今回、東京大学、ベイシスコンサルティング(東京都文京区)などとの知見も生かし、NEXCO東日本がデータを可視化・分析するマイクロソフトの「ビジネスインテリジェンス」(BI)を使用して開発した維持管理手法の研修を行った。
具体的にはNEXCO東日本が持つ点検データに対し、BIを使って鋼橋やコンクリート橋といった種類、上下線別、供用年数などの切り口と、変状の種類や劣化程度が容易に関係づけられるようにした。現場でも最新データの追加や詳細な分析ができる。
同手法のスキル習得研修を、同社の計五つの本・支社の社員を対象に実施。北大の数理・データサイエンス教育研究センターによる習熟度評価で、研修の高い効果を確かめた。
日刊工業新聞2020年6月12日