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イヌと共生で免疫系が強化される!?麻布大が提供するサイエンスリテラシー

麻布大学は同大の重点テーマ“ヒトと動物の共生科学”で研究・教育・社会貢献するセンターを立ち上げた。生活習慣病の原因遺伝子の変化や、アレルギーの免疫バランスと腸内細菌など、人獣の共通因子の研究を行う。イヌ・ネコの飼育によるメンタルヘルス改善と社会システム変革も目指す。地球共生を意識した全学3年生向けの実習科目や、研究内容の書籍出版と合わせ、他の獣医学系大学と異なる特色を強化する。

獣医学系大学は家畜など動物の病気や生産性の研究で強いが、アニマルセラピーなど多面的な研究は遅れている。麻布大学は約10年前からヒトと動物の共生をテーマに、教育・研究を強化している。

4月に新設した「ヒトと動物の共生科学センター」は3グループ8研究テーマを掲げる。グループのうち「共進化遺伝子の同定」は、集団生活向きの性質や生活習慣病など、遺伝子変化が人獣で起こる共進化が対象だ。「微生物クロストーク」は人獣共通感染症の原因微生物や、アレルギー性疾患の免疫バランスと微生物などに注目する。「認知インタラクションと社会システム」は、イヌ・ネコ飼育によるメンタルヘルス改善効果などを、医学・生物学的に明らかにして社会システムにつなげる。社会学や心理学の研究者も参加する。

教育では今春、同センターが3年生向けのアクティブラーニング「地球共生系サイエンスワーク」を遠隔授業の形で始めた。同センターの土台となる研究で、このほど発行した書籍「動物共生科学への招待―ヒトと動物と環境の未来をつくる―」を参考書とする。論文を読んで実験手順を設計、研究構想を確立する“サイエンスリテラシー”を身に付けさせる。

日刊工業新聞2020年6月2日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
アレルギーやアトピーなど免疫系の不調は、腸内細菌との関係が大きいという近年の知見は、私も知っていた。が、ヒトの腸内細菌とペットや家畜など身近な動物の腸内細菌が、相互に影響し合っているという話は今回、初めて知った。アルツハイマー病や糖尿病などとの関係もいわれ、この分野で最近、注目を集めているテーマなのだという。「生後6カ月以内の接触が効く」「出産前の母親の行動が影響する」といった話を耳にして、プレママ世代は大きな関心を示すだろうと感じた。まずは、記事にも書いた麻布大の書籍、「動物共生科学への招待」をしっかり読んでみたい。

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