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CESから見えてきた新たな主役企業、今年のシーテックは誰が?何が?驚きを与えるだろうか

業種超え未来のテクノロジー集う、見本市から「共創を模索する場」へ
CESから見えてきた新たな主役企業、今年のシーテックは誰が?何が?驚きを与えるだろうか

今年のCESの会場で談笑するソニーの吉田社長(左)とパナソニックの津賀社長(撮影・大河原克行)

2020年1月に、米ラスベガスで開催された世界最大の技術イベント「CES 2020」は、全世界から4400を超える企業が出展。2万件を超える未来の技術に、全世界から訪れた17万人が魅了された展示会となった。

世界中のすべての主要産業に影響を与える

人工知能(AI)や第5世代通信(5G)、ロボティクスといった新たなテクノロジーがあらゆるシーンで見られほか、IT・エレクトロニクスだけに留まらず、自動車、航空、ヘルスケアといったさまざまな業種の企業が参加。主催者である全米民生技術協会(Consumer Technology Association=CTA)のゲーリー・シャピロ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「世界中のすべての主要産業に影響を与え、それらを結び付けたのがCES 2020。ここで発表されたイノベーションは、産業を再構築し、雇用を創出し、世界経済を活性化し、また、世界の生活を向上させる」と語る。

また年々注目度が高まっている全世界のスタートアップ企業が出展するEureka Park(ユーリカパーク)には、46カ国から1200社を超える企業が集結。ユニークなアイデアを、テクノロジーで形にする事例が相次ぎ、多くの来場者の関心を引いた。

日本企業が存在感

そして、日本企業の発表が注目を集めたイベントでもあった。ソニーは、テレビの新製品などを展示する一方で、電気自動車(EV)のコンセプトカー「VISION-S」を公開。ソニーの車載向けCMOSイメージセンサーや対象物との距離を算出する「タイム・オブ・フライト(ToF)」センサーなど、数種類のセンサーを33個搭載。車内外の人や物体を検知、認識して、高度な運転支援を実現するという。

同社によると、「ソニーがクルマメーカーになるわけではない。モビリティにおける安心、安全、快適さやエンタテインメントなども追求し、クルマの進化に対する貢献を目的にしている」という位置付け。ソニーの吉田憲一郎社長兼CEOは、「過去10年は、スマホをはじめとするモバイルが、私たちの生活を根本から変えたが、次のメガトレンドはモビリティーだと信じている」と話す。

コンセプトカー「VISION-S」を披露するソニーの吉田社長(撮影・大河原克行)

また、トヨタ自動車は、閉鎖予定の東富士工場の跡地にコネクティッドシティ(スマートシティ)を設置、2021年初頭に着工することを明らかにした。トヨタの豊田章男社長は、「バーチャルとリアルの世界の両方で、AIなどの将来技術を実証する。街に住む人々、建物、車などモノとサービスが情報でつながり、ポテンシャルを最大化できる」と、新たな取り組みの成果に期待する。

CES 2020は、ここ数年、自動車メーカーの展示が相次ぎ、今年も日米欧の自動車メーカー9社が出展。150を超える自動車関連テクノロジー企業が、最新のコネクテッドカーや自動運転車、未来のコンセプトを披露した。また、BtoB(企業間)展示の存在感が高まり、「Health&Wellness」の異業種カテゴリーでは135社以上が出展、前年比25%近く増加したほか、スマートシティの展示エリアは25%拡大。デルタ航空が航空会社として、初めてCESの基調講演に登壇したことも話題になった。

日本からも積水ハウスが出展。前年のCESで発表したプラットフォームハウス構想に基づいた第1弾サービス「在宅時急性疾患早期対応ネットワークHED-Net」を発表した。こうした異業種の出展の増加や、スタートアップ企業への広がりは、CESを見本市の役割から、「共創を模索する場」に変わることを意味している。

パナソニックの津賀一宏社長は、「CESの場を家電見本市としてではなく、当社が持つテクノロジーを使い、BtoBを通じてどう貢献できるのかという、ポテンシャルを示す場に変えてきた。今回のブース展示も、かなりの部分で協業を前提としたものになっている」と語る。

ソニーのコンセプトカーやトヨタのスマートシティも、技術や方向性を見せることで、共創パートナーを獲得する狙いがある。全世界から多くの企業が集まるCES 2020は、共創の場としての役割がますます重要になっている。

全世界から17万人が来場した今年のCES(撮影・大河原克行)

一足早くBtoBシフトしたシーテック

CES 2020が盛況のうちに幕を閉じてから、約3週間後、日本では、2020年10月20日~23日に、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「CEATEC 2020(CPS/IoT Exhibition)」の概要が発表された。

CEATEC(シーテック)は、2016年に家電見本市から脱却。「CPS/IoTによる新たな産業を創出するためのテクノロジーを活用した社会や暮らしを提案する展示会として、共創のきっかけをつくる場、キーパーソンが集結する場、次世代を担う層が集う場になっている」(CEATEC運営事務局の菊嶋隆史事務局長)。

主催者が掲げる開催テーマは、「つながる社会、共創する未来」。MaaS(乗り物のサービス化)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)といった「次世代モビリティ」、食品やアパレルといった産業を含めた「次世代ライフスタイル」、あらゆる産業の枠を超えて、超スマート社会を実現する「Society 5.0を支える5GやAI」を注力テーマに掲げ、テクノロジーで未来の社会や暮らしをデザインする場として、「視て」、「聴いて」、「感じて」、「考える」といったCEATEC体験を提供するという。

CEATECは、CESに先駆ける形でBtoBシフトを進め、共創のための展示会であることを明確に打ち出してきた。IT・エレクトロニクス業界だけでなく、自動車、航空、建設、住宅、金融、流通などの幅広い業種の展示が相次ぎ、実ビジネスとワクワク感が同居している。

昨年のSociety 5.0 TOWNには建設会社なども多く出展した

また、出展者数は増加傾向にあり、昨年は787社/団体が出展。海外からも24カ国/地域から250社/団体、スタートアップ/大学研究機関も170社/団体が出展した。新規出展者は304社/団体となり、4割近くを占めている。

昨年の出展者を対象にしたアンケートでは、CEATECがCPS/IoTを提案するのはふさわしい場所と回答は85.0%に達し、新しいビジネスルート開拓に役立つ場との回答が77.9%に達しており、BtoBの展示の場として、そして共創の場としての成果が生まれていることがわかる。

また、昨年の来場者は14万4491人で滞在時間は前年よりも長くなっており、一日中という回答が18.7%を占め、前年より3.6ポイント増加。62%以上が半日以上をかけて見学している。主催者であるCEATEC実施協議会では、「体験型の展示やカンファレンスに参加する人の増加が影響している」と分析している。

幅広い業種や産業からの来場者があるのもCEATECの特徴で、製造・機械・精密機器では2万1000人以上、情報通信機器・電子部品・電子デバイスでは2万1000人以上が訪れたほか、住宅・建設・不動産からは4500人以上、自動車・輸送機器では4000人以上、官公庁・自治体では3500人以上、医療用機器・健康用機器では1000人以上が来場したという。また、学生の来場も7500人以上と増加傾向にあり、未来の人材に対する訴求も、CEATECの重要な新たな柱になろうとしている。

今年は4つの観点から共創を促す

CEATEC 2020では、【政策】、【産業】、【次世代】、【海外】の4つの観点から共創を促す展示会を目指すという。【政策】では、省庁や団体と連携したコンファレンスを開催して、Society 5.0に関する経過や成果などの最新情報を発信。【産業】では、業界の枠を超えて連携を実現するSociety 5.0 TOWNにより、「SDGs達成を見据えた2030年のまちづくり」を発信する。また、【次世代】では、大学教授や有識者などで構成するアドバイザリーボードを新設。学生にフォーカスした活動を強化する予定だ。そして、【海外】では、スタートアップ企業などが出展するCo-Creation PARKやGlobal Pavilionの規模を拡大し、世界中の超スマート社会に向けた施策を集結させるという。

CEATEC 2020の出展募集は、2月12日午前10時から始まった。「CPS/IoT」と「共創」のための展示会として、あらゆる産業や業種が参加するCEATEC 2020は、どんなイベントに進化するのだろうか。

(取材=フリージャーナリスト・大河原克行)
昨年のシーテックではテック系ベンチャーが多く参加(ダフトクラフトのVRシステム)

「CEATEC 2020」公式WEBサイトはこちら
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ソニーの吉田社長とパナソニックの津賀社長のツーショットは珍しい。何年か前、シーテックの会場でもソニーの当時の平井社長とパナソニックの津賀社長がそれぞれのブースを紹介するという光景も見られた。まだまだ存在感を示すことができる両社。今年はともに出展を期待したいところ。

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