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アジア物流の「縁の下の力持ち」パレット、共同利用のメリットとは

アジアパレットシステム連盟、国を超えた買取再販システム構築へ
アジア物流の「縁の下の力持ち」パレット、共同利用のメリットとは

APSF第14回総会

 日々何気なく注文する通販、宅配便、海外から輸入された食品…物流によって私たちの暮らしは日々豊かになっている。その物流を“文字通り”縁の下で支える存在をご存じだろうか。
 物流倉庫を覗いてみると、その「縁の下の力持ち」がたくさん働いている。フォークリフトで上げ下げされ、移動する大量の段ボールやさまざまな容器。その下には必ずといっていいほど「パレット」が敷かれているはずだ。
 「パレット」は荷物を上に乗せ、隙間にフォークリフトやハンドリフトの爪を差し込んで移動しやすくするものである。木製、プラスチック製、金属製などが多くの国で使用されている。

国を超えて共同利用


 アジアでは輸出入の増加における作業の効率化のため、莫大な数のパレットが利用されている。しかしその強度やサイズ(=規格)は国によって異なり、持続可能な共同利用(=リターナブル)が難しい状況にある。

 そこで国を超えてパレットの規格を統一するための取り組みが進められている。
 EU圏ではすでにパレットの規格が統一され、運用開始されている(EPAL)。アジアでも2006年に「アジアパレットシステム連盟(APSF)」が発足。現在、日本、インド、インドネシア、タイ、中国、韓国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマーが参加している。年1回の総会で各国の物流やパレットに関する情報を共有するとともに、パレットの共通化に向けた協議検討を行ってきた。

実際の運用開始に向けて


 これまで議論を重ね、11 型(1100×1100mm)と 12 型(1000×1200mm)を共通のパレットサイズとして規定するなどの加盟国共通の規格である「APSF規格」を6件決定してきた。しかし総会発足から13年が経過しているにもかかわらず、実際の運用開始には至っていない。一口に「共通化」といっても、運用を開始するには国内外で検討・解決すべき事項がいまだ数多く存在するためだ。

 この状況を打開すべく、2019年5月15日に東京で開催された第14回総会では、これまでに決定した共通パレットサイズの運用開始に向けたロードマップが示された。
 ロードマップでは、運用開始時期を遅くとも2025年とした。それまでに関税や統計など各国のパレット情報の共有に基づく運用ルールの策定や、仕様についての詳細を決定。パレット事業者の連携や取りまとめ、ブランド(マーク)の統一などを随時行っていく。加盟国間でAPSF各国パレット事業者のパレットを活用し、共同利用枚数の増加・定着をはかったうえで、パレットの認証機関やシステムを整備する。

2025年までのロードマップイメージ(日本提案の内容から抜粋)

 また、パレットリターナブルシステムの構築にあたり、今後さらに安価な使い捨てパレットが増えていくと環境負荷がかかってしまう。
 そこでAPSFでパレットの規格を共通化し、認証済みであることを示すマークを付与。加盟国間で認証マークのついたパレットの相互受け入れ、買取再販システムを構築することで使い捨てを防ぐ方法について検討が始まった。

東京大会で議論が深まる


 このロードマップおよび行動指針は「APSF 東京宣言 2019」として総会で提案された。加盟国の出席者はこれに対して活発な議論を展開。実際に運用開始することを想定し、「各国でパイロット企業を決め、ビジネスアクションを議論するのはどうか」「どういった団体が管理監督するかを決める必要がある」などの意見が出された。
 また関税については特に関心が高く、「加盟国間ではAPSFのマークがついているパレットは非課税にするなどの対応が必要ではないか」「フリートレードゾーンまではAPSF加盟各事業者のパレットを使ってみるというのはどうか」といった声が上がった。

各国から代表が集い、議論を交わした

 第14回総会ではこの「東京宣言」を採択し、参加国の署名とともに実行していく予定であった。しかしより深い議論が必要との見方が強まり、実務委員会でさらに内容を詰めていくこととなった。
 APSFの日本代表である日本パレット協会は「採択には至らなかったものの、実際の運用を想定した意見が多く出されたことで大きく前進した。今後の委員会での議論に期待したい」と話した。

 総会ではその他に各国の物流・パレット事情に関するプレゼンや、今後、加盟を検討するイランのスピーチ(代表者欠席のため代読)などが行われた。

第14回APSF総会オフィシャルスポンサー


【CHINA】

Pallet Professional Committee of China.
http://www.chinawuliu.com.cn/office/26/index.shtml

Anwood Logistics System Cooperation
http://www.anwoodlogisticssystems.com/index.asp

【SOUTH KOREA】

Korea Pallet and Container. Association
http://www.kopal.or.kr/

LogisAll
http://www.logisall.co.kr/

【JAPAN】

CS-JAPAN CO.,LTD/シーエスジャパン株式会社
https://www.csjapan.net/

JAPAN LOGISTIC WARE LTD./日本物流機器株式会社
http://www.jlw.co.jp/

JAPAN PALLET RENTAL CORPORATION/日本パレットレンタル株式会社
http://www.jpr.co.jp/

NIPPON PALLET POOL Co.,LTD/日本パレットプール株式会社
https://www.npp-web.co.jp/

UPR Corporation/ユーピーアール株式会社
https://www.upr-net.co.jp/

YAMAMURO Co.,Ltd/山室木材工業株式会社
http://www.yama-muro.co.jp/

Japan Pallet Association/一般社団法人日本パレット協会
https://www.jpa-pallet.or.jp/
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