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AIの有力研究機関、国際会議録活用して特定する新手法

JSTが考案
 科学技術振興機構(JST)はトップクラスの国際会議のプロシーディングス(会議録)から、有力な研究機関を特定する新手法を考案した。情報通信技術(ICT)など進展が早い分野は、重要会議の査読付き口頭発表と議論が重視され、他分野で一般的な学術論文の分析だけでは動向をとらえられない。人工知能(AI)の5会議に絞り込み、分析することで、機械学習や画像認識など特定分野も含めて先進的な研究を進める大学・企業を特定した。

 コンピューター科学などのICT分野は研究業績の評価で、他分野と比べて国際会議での発表が重視される傾向にある。注目論文の引用数からみる分析法は、引用に年月がかかり変化の早い分野に向かない問題がある。

 JSTは、コンピューター分野の国際会議ランキングで有名な「コア・カンファレンス・ランキング」に注目した。「採択される発表論文数は投稿数の2割以下」で、重要研究者の関与が強いなど質の面から、約1600会議の上位4%に入る大規模会議に絞り込んで分析した。AI総合と機械学習が二つずつと、画像認識が一つの計5会議だ。

 2017年のこれら年次大会の会議録から、会議発表の論文の著者が所属する機関を見た。共同著者分は重複している。その結果、AI総合の発表数は米国と中国が2強で計約7割。個別技術の会議では米国1強だった。

 日本では直近5年間で東京大学が圧倒的で、第2グループは国立情報学研究所、NTT、東京工業大学、京都大学などだ。機械学習では統計数理研究所や名古屋工業大学も目を引く。画像認識は産業技術総合研究所、東芝に特徴があった。

 JSTは研究費配分機関として、国内の中心的な研究機関の特定や研究動向分析をしている。ICT分野で有効な評価法開発もこの中で手がけている。

                   
日刊工業新聞2019年5月28日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
分野によりこんなに違うのか、と思うことが大学の研究教育では時々ある。「ICT分野では学術論文より(orだけでなく)会議発表に重きを置く」ということを、私が知ったのは5年ほど前だったか。また博士号取得も、人文系はメチャクチャ難しいのに医学系は容易だ。そのため社会人博士学生のかなりの割合(たしか半分ほど)が、臨床医として働きながら博士号取得を狙うケースだ。研究教育の議論をする時は、この「分野による差はどうか」という点にぜひ注意を払ってほしい。

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