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計量機メーカーが「クイズ王選手権」で子どもたちに見つけて欲しいこと

はかりしれない可能性、滋賀で青少年育成活動
計量機メーカーが「クイズ王選手権」で子どもたちに見つけて欲しいこと

地元テレビ局とともに「小学生クイズ王選手権」を開催した

 「ある商品に20%の利益を見込んで定価をつけました。定価の15%引きで売ると30円の利益になりました。この商品の仕入れ値は何円ですか?」

 「はかりのイシダ」として知られ、自動計量・包装機を製造するイシダの滋賀事業所(滋賀県栗東市)。2018年7月、事業所のホールに地域の小学生50組100人が集まった。同社が企画し、地元テレビ局とともに開催した「小学生クイズ王選手権」の予選会で、子どもたちは算数や地元滋賀にちなんだ問題が並ぶペーパーテストに真剣な表情で取り組んだ。テストの結果、上位5組と敗者復活戦で勝ち残った1組の計6組が決勝への出場権を獲得した。

 イシダはここ数年、青少年育成をテーマにしたCSR(企業の社会的責任)活動に力を入れる。18年に、滋賀事業所が開設されて50年の節目を迎えたこともあり、滋賀県内を中心に取り組む。

 なぜ、青少年を対象にした活動に力を入れるのか。同社CSR推進室の三原国彰室長は「どんなことでもいいので自信を持つ子どもたちを1人でも増やしたい。さまざまな取り組みがそのきっかけになればうれしい」と語る。

左がCSR推進室の三原国彰室長   

 17年から「はかり」をテーマにした子ども絵画展や、小学生や教員を対象にしたプログラミング教室を開くほか、「イシダ杯」と社名を冠した少年剣道大会も18年から始まった。「小学生クイズ王選手権」の決勝の様子はイシダのスポンサー番組として18年9月に滋賀県内でテレビ放送された。19年の夏に2回目を実施することも決まっている。

 今後、プログラミング教室の実施回数を増やしたり、滋賀県を拠点に活動するプロスポーツチームとの連携を進めたりして活動をさらに広げるという。19年4月以降の早い時期に一般財団法人を設立し、将来的には公益財団法人への移行を目指している。

老舗企業の歴史から生まれる「地域貢献」


 滋賀県は県内総生産に占める製造業の割合が41.1%と全国で最も高く、はかりの生産量も全国でトップだ。イシダにとって滋賀事業所は生産や開発の拠点で、全社員の半数に当たる約700人が勤務する。周辺地域には協力工場も多い。

 1893年に民間で初めてはかりの製造販売が許可された時、創業者の2代目石田音吉が京都府の要請を受けて事業を起こしたのが会社のスタート。当時、音吉は京都府議会議員を務め、琵琶湖の湖水を京都市内へ流すための第二琵琶湖疎水開削事業にも尽力していた。

 企業理念は「三方良し」。三方は売り手、買い手、世間を指し、売り手と買い手がともに満足し、社会貢献もできるのが良い商売という意味だ。元々は近江商人の心得とされるが、イシダも音吉の時代から企業としてこの考え方を受け継いできた。今、CSR活動で先頭に立つ三原室長は「地域の多くの方々が喜んでいる姿を目にすると三方良しを改めて実感する」という。

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「世界の適社・適者」を目指す


 18年のはかり絵画展には、前年の倍以上の877点の作品が集まった。作品は滋賀事業所内に展示し、事業所の従業員や来客のほか、一般公開で訪れた人が好みの絵に投票し、得票数に応じて各賞を決定した。

 事業所内の生産現場が一望できる場所にも展示スペースを設け、作品とともに事業所内の様子も見てもらえるようにした。従業員が休憩時間に投票に参加する姿もあり、作品展示の1か月間は「働く場が癒しの場に変わったような雰囲気だった」(三原室長)という。

 これまで本社のある京都市内では毎年、京都商工会議所の「小学生への環境学習事業」に協力し、はかりを使ってゴミの減量や資源の大切さを考える出張授業を行ってきた。女性社員が中心となり講師を務めてきたが、新人研修の一環として入社2年目の若手社員を派遣することも検討している。

 企業理念「三方良し」よりも上位の理念として「世の適社、適者」を目指すべき姿と掲げる。これは「どの時代においても、社会に認められ、必要とされる人や企業は不滅であり、繁栄し続けることができる」という考え方に基づいている。今後はCSR活動と従業員の接点をさらに増やし、人材育成にもつなげていく考えだ。

 「イシダは子ども達の笑顔を応援します」。「小学生クイズ王選手権」の放映に合わせて制作したテレビCMでは、こんなメッセージを流した。クイズ番組では、正解が発表される度に子どもたちが喜びを全身で表現した。イシダの活動の浸透とともに、子どもたちの笑顔もさらに地域に広がっていくだろう。

今後はプログラミング教室の実施回数を増やす方針

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