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(続報)アップルとBMWの提携交渉行き詰まり、ロイター

EV独自開発したいアップル、一方で協議再開の可能性も
(続報)アップルとBMWの提携交渉行き詰まり、ロイター

BMWの電気自動車「i3」

 電気自動車(EV)をめぐるアップルとBMWの提携交渉が行き詰まり、結論の出ないまま協議が終了したとロイターが7月31日報じた。複数の関係者の話として伝えたところによれば、アップルが自前での自動車開発を推進したい意向である一方、BMWとしては製造ノウハウを両社で共有することにより、単なるアップルのサプライヤーになることを警戒しているためだという。一方でロイターは、関係者の話として、現在は協議が中断しているものの、両社の話し合いはいずれ復活するかもしれない、と交渉再開に含みも持たせている。

 アップル幹部がBMWライプチヒ工場を視察し、両社が提携交渉を進めている、とドイツのマネジャー・マガツィーン誌がすっぱ抜いたのは先週のこと。ロイターによれば、この工場視察の際、アップル幹部が従来とはまったく違うBMWの新しい生産手法に感銘を受け、生産にかかわる詳細な質問を行っていたという。BMW幹部も部品ライセンスの準備ができていることをアップル側に示したとされる。

 BMWは、現時点で乗用車の開発についてアップルと何の話し合いも行われていないとコメントしている。

 交渉が暗礁に乗り上げた背景には、BMWの経営陣の交代も影響しているようだ。当初アップルとの話し合いを推進し、炭素繊維をボディーに使った電気自動車「i3」の開発責任者を務めたヘルベルト・ディース開発担当取締役が昨年12月、ライバルのフォルクスワーゲン(VW)にVWブランドのトップ含みで移籍。5月にはハラルド・クルーガーCEOが就任し、新規プロジェクトに乗り出すよりも、当面は経営チームの体制作りや彼自身の経営プランに専念するとみられている。

(※追加)
 BMWのクルーガーCEOは、8月2日付の独フランクフルター・アルゲマイネ紙とのCEO就任後初のインタビューで、「シリコンバレーのIT企業は、起業家精神と信じられないほどのペースの速さ、新しいビジネスアイデアをもとに、技術的イノベーションを実現している点で卓越している」と述べた上で、「変化は早く破壊的だ。自動車産業もまた、そうした変化に適応する必要がある」として、IT企業との連携の重要性を強調した。

 さらに、アップルとの協業の可能性の質問に対しては、「われわれはアップルも含め、国際的なIT企業と定期的に意見交換を行っている。コネクテッドカーのサービス実現に向けて、ITとわれわれの自動車との統合について話し合っている」と答えた。
ニュースイッチオリジナル  
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
BMWのR&Dトップが指摘するように、BMWとアップルは、ブランディングや先進的な製品開発、美しいデザインに力を入れている点で確かに似通っていると言える。アップルがクルマを自社開発したとしても、それを量産して販売しメンテナンスまでは行うのは無理な話。どうしても自動車分野のパートナーが必要になるだろう。ただ、はた目にはうってつけの組み合わせに見えるが、プライドの高い会社同士だけに、交渉がすんなり進むとは思えない。

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