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内部が鳥の骨組みのような主翼、本物のボーイング777より5%軽量化の可能性

デンマーク工科大がスパコンで設計
内部が鳥の骨組みのような主翼、本物のボーイング777より5%軽量化の可能性

大型旅客機の主翼部分

 生物の自然選択を真似た仕組みをアルゴリズムに取り入れ、大型旅客機の主翼の内部構造をスーパーコンピューターで最初から設計したところ、本物の翼に比べて重量を2-5%削減できることが研究で示された。最適形状生成の新しい手法を開発したのはデンマーク工科大学機械工学部のニールス・オーゲ(Niels Aage)准教授らのチーム。

 これまでスパコンで設計できるのは航空機の部品やシンプルな構造にとどまっていたが、こうした詳細設計ツールが将来、風力発電のタービンやタワーマスト、地震に強いビル、橋などさまざまな大型構造物に応用できる可能性があるとしている。成果は5日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。

 コンピューターで構造設計を行う場合、2次元(2D)のピクセル(画素)に相当する3次元(3D)の「ボクセル」を表示単位として使う。

 ただ、これまで最適形状設計が適用できる3Dモデルは500万ボクセルが限界だった。今回、それを約200倍の11億ボクセルにまで拡張。大型構造物の詳細設計にも適用できるようにし、長さ25メートルのボーイング777の主翼の内部構造をフランスのスパコン「キュリー」に5日間かけて計算させた。

 その結果、主翼内部の主要部材であるスパーやリブ、ストラットがこれまでのような直線構造ではなく、湾曲し、鳥のくちばしに見られる生物の骨の構造と似た複雑な構造が出現した。こうした構造で強度をこれまでと同じに保ちながら、200-500キログラムの主翼の軽量化が可能になり、1機当たり年間40-200トンの航空燃料削減につながるかもしれないという。

 この最適形状設計ツールが適用できる大きさもミリメートルから数十メートルと幅広い。ただ、問題は設計された構造が入り組んでいて複雑になること。現在の製造技術でこうした主翼の量産化は実現困難と見られ、大型の3Dプリンティング技術が必要になるという。
2017年10月8日付日刊工業新聞電子版
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
構造が複雑で製造するのが大変そうですが、機体のメンテナンスも難しそう。たぶん将来は、3Dプリンターに合った企画・設計・製造・検査・メンテナンス・再利用の仕組みが整えられるようになっていくことでしょう。

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