鴻海入り1年、シャープは何が変わったか。300万円超は社長自ら決裁

鴻海流のコスト管理や審査プロセスを植え付ける

 シャープは12日、台湾・鴻海精密工業の子会社となってから1年を迎える。経営危機に瀕(ひん)していたシャープは、戴正呉(タイセイゴ)社長のリーダーシップと鴻海の支援により、わずか1年で業績を大幅に回復した。2年目以降は構造改革路線を終え、鴻海とともに米国や中国などの海外事業を再拡大しようと勢いづいている。ただ、鴻海グループの戦略に関わるためか、シャープは具体的な販売実績や経営戦略を明かさないことが増えており、実力や成長性を評価する上での課題も生まれている。

 シャープは2017年4―6月期決算で、3四半期連続となる当期黒字(144億円)を確保した。経営危機の元凶だったディスプレー事業も、鴻海が中国で展開したテレビ拡販策「天虎計画」の効果などで増収・営業増益基調に転換した。

 「シャープのどこが変わったのか」―。7月末の決算会見で業績回復の理由を問われたシャープの野村勝明副社長は「戴社長の強いリーダーシップで物事を決めるスピードが速くなった」と説明。戴社長による鴻海流経営の成果を強調した。戴社長は就任直後から現在まで、予算が300万円を超える案件を自ら決裁し、担当幹部らを問いただして鴻海流のコスト管理や審査プロセスを植え付けてきた。

 その戴社長が2年目以降に目指すのは、構造改革から事業拡大への転換だ。最近は社内会議でも、事あるごとに「攻めの姿勢」を求めるという。その代表例がフルハイビジョンの16倍の解像度を持つ「8K」ディスプレー事業だ。

 シャープは、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビを相次いで発売する国内の競合他社を脇目に、8Kテレビの開発とその市場創造に必要な業務用カメラをはじめとする“エコシステム(生態系)”の育成に力を注いでいる。中国や米国で大型液晶パネル工場の建設計画を進める鴻海とともに、18年以降に国内外で8K市場を創出し、成長の柱とする考えだ。

 鴻海の力を得て勢いづくシャープだが、気になる点もある。鴻海という巨大企業の陰に隠れて、経営に不透明な部分が増えたことだ。例えば主力のスマートフォン向けディスプレーは、大手スマホメーカーの採用方針によって今後の需要変動が危惧される。しかし、野村副社長は「戦略は言えない」と口をつぐみ、どんなリスクを想定しているのかも分からない状態だ。

 鴻海の支援で増販した中国向けテレビは、販売実績や鴻海グループと合わせた収益状況が明かされていない。最大3兆3000億円とされる鴻海の米国投資計画も、シャープが果たす役割は不明だ。2年目に臨む戴社長にはシャープの実力と成長性を示すためにも、これらの戦略や実績の説明に、より積極的に取り組んでほしいところだ。
                

(文=大阪・錦織承平)

日刊工業新聞2017年8月10日

明 豊

明 豊
08月10日
この記事のファシリテーター

これだけリストラしたのだから黒字化はマスト。社内に少しは活気が戻っているのは分かる。ただし液晶事業の先行きが見えない。何で成長するの?これからでしょう、真価は。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。