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希少がんのAI判別はどこまで可能か

メタデータなどが東大と19年実用化へ
希少がんのAI判別はどこまで可能か

AIに教えるデータを作成。AI学習で必要な正解データ作りを効率化する前処理システムをメタデータが開発した

 人工知能(AI)ベンチャー企業のメタデータ(東京都文京区、野村直之社長)は、東京大学医学部付属病院、インスペックと、病理画像から希少がんの有無を判別するシステムを構築している。2019年の実用化が目標だ。がんを病理診断する病理専門医は国内に約2400人と少なく診断も約1週間かかる。特に希少がんは患者数が少ないため判別が難しい。AIシステムならば数分で診断可能で専門医の負担を軽減でき、期待は大きい。

 AIで希少がんの有無を判別する場合、希少がんがどんなものかを学習する作業に時間と手間がかかる。メタデータの野村社長によると、病理画像データは1枚当たり約1・5ギガバイトとデータ量が大きい。効率良く学習するためにAI学習で必要な正解データ作りを効率化する前処理システムをメタデータが開発した。前処理にもAIを使い、1枚の病理画像を最大10万枚に分割して学習していく。併せて「独自に高速画像処理の技術も開発した」(野村社長)ことから、膨大になる病理画像データの学習を短時間で行える。

 判別にはAI技術のディープラーニング(深層学習)を使う。現在の希少がん診断は見逃しがないよう、専門医がダブルチェックするなど判別に手間をかけている。

 AIを使えばチェックの手間が軽減する。手術中に診断できる仕組み作りを目指している。希少がんは経験や勘を培うことが難しい。AIで補うことで、病理診断の精度も高められる。

 取り組みに先行して希少がんではないがん患者と健常者のリンパ節の病理画像データを学習し、がん転移を判別した結果、約98%の精度が出た。今後は「他の部位のデータを学習し数多くの希少がん判別に対応していく」(同)としている。
日刊工業新聞2017年8月9日
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
がんなどの診断をAI技術を使って支援する取り組みは世界中で活発だ。日本では国立がん研究センターがNECやプリファード・ネットワークス(東京都千代田区)と連携している。京セラは筑波大学と画像から皮膚がんを判別するシステムを開発した。

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