「大きな災害が続く現代は創設当時とよく似ている」臨床を重視する昭和大学

学長・小出良平氏に聞く

 昭和大学は医学、歯学、薬学、保健医療学の4学部で構成する医療系総合大学として、国民の健康に貢献する医療専門家を多く輩出する。国際的な医療技術支援の拡大のために、医療人材育成の場としてますます重要性は高まっていくだろう。2018年で創立90年を迎える同大の小出良平学長に展望を聞いた。

 ―医療系の大学として社会への使命をどう考えますか。
 「臨床医の養成が使命だ。本学創設前、医学教育では研究医を育てる風潮があった。1923年に約10万人の犠牲者を出した関東大震災の発生で、この流れが変わった。臨床医の重要性が見直され、昭和大ができた。大きな災害が続く現代は創設当時とよく似ている。臨床に携わる医療人を育てるという信念が今こそ生きる」

 ―新しい医療技術への取り組みは。
 「昭和大学病院(東京都品川区)など系列の集中治療室(ICU)をつなぎ、各施設を遠隔地から集中管理するシステムの研究に取り組んでいる。集中管理を行う同病院の拠点から、入院中の患者の検査結果や所見、表情が確認できる。治療を行う上でのダブルチェックが期待できる。また急変が起きたときには専門医による対応が可能になる。関わっている医師は非常に積極的。持続的な運用には人材確保が鍵となる」

 ―どのような医療人材の育成を目指しますか。
 「医療はチームワークであり、まずはチームワークを重んじられる人材の育成だ。本学では1年次に富士吉田キャンパス(山梨県富士吉田市)の学生寮に入る決まりがある。学部の異なる4人が1部屋で共同生活を送る。寮生活を通し、思いやりやチームワークが生まれる。学部を超えた交流は、将来臨床で生きるはずだ。さらに24時間医療人であるという自覚も養いたい」

 ―来年創立90周年を迎えます。100周年を見据えた展望は。
 「“医療人を育てる医療人”の育成にさらに力を入れる。保健医療学全体の高度な知識を学ぶ大学院の保健医療学研究科には、本学卒業後に病院で働きながら学位を取れる制度があり、活用してもらいたい。臨床経験を持つ教員を増やしたい」
小出良平氏                

【略歴】こいで・りょうへい 77年(昭52)昭和大院医学研究科修了。89年同大医学部助教授、92年教授、99年同大病院付属東病院院長、01年同大理事、10年医学部長を経て13年学長。医学博士。群馬県出身、71歳。



【記者の目/医療収入向上への対応がカギ】
寮生活を通じたチーム医療の基礎育成や、臨床経験者を指導者として育てる仕組みを持つなど、臨床に強く焦点を当てた人材育成が大きな特徴。複数病院のICUをつなぐシステムの研究的導入を進めるなど、医療の質向上に積極的な姿勢も印象的だった。革新的なシステムを支える医療収入向上に向けた取り組みの成功が今後の課題だ。(安川結野)

日刊工業新聞2017年8月10日

昆 梓紗

昆 梓紗
08月10日
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寮生活での学部を超えた密接な交流は、ただ大学で学んでいるだけでは生まれないものでしょう。

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