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トヨタ系ディーラー、社員がサーキットで試乗する理由

タイヤの違い体験、アフター分野の拡大狙う
トヨタ系ディーラー、社員がサーキットで試乗する理由

実際にサーキットを走行してタイヤの違いを体感する

  KTグループ(横浜市神奈川区、上野健彦会長兼社長)は、トヨタ系ディーラーの神奈川トヨタ自動車など16社で構成する。新車販売に加え、タイヤやオイルなどのアフター分野の商品販売にも力を入れる。顧客に高性能タイヤや操縦安定性の向上につながるボディーダンパーを提案することを狙いに、社員向け試乗研修会を年1回行っている。

 6月に千葉県袖ケ浦市のサーキットで行われた2日間の研修会には、グループ傘下のディーラー4社・176人が参加した。横浜ゴム製タイヤなどを販売するグループ会社の神奈川ハマタイヤ(横浜市旭区)が企画し、スポーツタイヤと通常タイヤの違いを体験できるなど、さまざまな試乗メニューをそろえた。

 新品の低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」とすり減った中古タイヤを装着したプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」にそれぞれ試乗した。

 篠田典之神奈川ハマタイヤ営業企画部長は「コーナーでハンドルを切った時の挙動が明らかに違う」と強調する。交換時期のタイヤとの性能差を体感することで、早めのタイヤ交換を顧客に推奨できるようにする。

 狭い場所で行うパドック試乗メニューでは通常空気圧240キロパスカルのタイヤと通常より空気圧が25%少ないのを装着した小型ハイブリッド車(HV)「アクア」を2台用意。ジグザグ走行でハンドルを切った際、空気圧不足の車の方がフラフラとする感じが実感できた。

 日本自動車連盟(JAF)の調査によると、ロードサービスの出動理由の中にタイヤのパンク、空気圧不足によるバーストが増えているという。背景としては空気圧などの点検をしてくれたガソリンスタンド(GS)が急速に減り、セルフスタンドに変わったことがあるとも言われる。そのため空気圧が減っても「毎日乗っているのに気づかない」(篠田部長)ことも多い。

 このような危険性をディーラーの営業社員らが体感することで、月1回の空気圧点検やタイヤ交換の推奨を通じて顧客に注意喚起できるとみている。こうした試乗研修会などの効果もあって、タイヤの販売も堅調だ。

 KTグループ傘下ディーラー4社の1店舗当たりのタイヤ販売目標は年間1000本。2016年は目標をクリアした65店舗が量販賞表彰を受けた。表彰を開始した06年比ではグループ全体で25%の販売増となっている。

 タイヤとともに力を入れているのがボディーダンパーの販売だ。高圧窒素ガスを封入したオイルダンパーを基に開発したもので、操縦安定性と乗り心地の向上、振動や騒音が軽減できる。ボディーの前後に2本装着し、価格は10万円程度かかるが「クレームはまったくない」(神奈川トヨタ広報室)。16年の販売実績はグループ全体で過去最高の2603セットとなった。ぶn
(文=渡部敦)
日刊工業新聞2017年7月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
今後もグループではアフター市場向け営業施策に加え、自動車保険などにも注力する。顧客のカーライフサポートに努めることで、グループの存在感を高めていきたい考えだ。 (日刊工業新聞横浜総局・渡部敦)

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