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サイバー防衛、高専から新戦力。東大破る快進撃

木更津・米村研究室チーム、興味引き出し全国優勝
サイバー防衛、高専から新戦力。東大破る快進撃

情報危機管理コンテストで奮闘するYone−laboの4人

 サイバーリスクに対応できる人材を育成するため、全国の高等専門学校で進められている「情報セキュリティ人材育成事業」を活用し、木更津工業高等専門学校(千葉県木更津市)が突出したセキュリティー技術を持つ学生の育成で成果を上げている。5月にサイバー攻撃を受けた際の防御力を競争する「情報危機管理コンテスト」で優勝し、経済産業大臣賞を受賞した。ITに強い関心を持つ学生の自主性を尊重した上で環境と情報を提供することが成果に結び付いている。

 2017年の情報危機管理コンテストには26チームが参加し、1次・2次予選を経て、決勝では木更津高専、岡山大学、早稲田大学、関西大学、東京大学のチームが競った。

 木更津高専は情報工学科の米村恵一准教授の研究室に集まる学生でチーム「Yone―labo」を結成して挑戦した。

 チームは情報工学科の小高拓海さん(5年生)、齋藤遼河さん(3年生)、望月雄太さん(3年生)、丸山泰史さん(2年生)の4人。

 最年少の16歳で参加した丸山さんは小学校4年生からプログラミングの学習を始めた。「将来はネットワーク環境を整備するエンジニアになりたい」と夢を語る。ゲームクリエーターを目指して入学した小高さんは「セキュリティー技術は学べば学ぶほど知らないことが出てくる。その深みが面白い」と技術を学ぶ魅力を説明する。

 このようなモチベーションの高い学生に米村准教授は、さまざまなIT関連のイベントや企業の勉強会、コンテストに参加するように「ひたすら声をかけた」。さらに研究室を開放し最新鋭のサーバーなど設備機器を自由に使えるようにした。

 米村研究室からはアウトプットもある。セキュリティーコンテストを簡単に再現できる学習パッケージのプロトタイプを開発。ただ、開発した学生らは問題設定やシステムの安定性に満足できず、システムをブラッシュアップしており、18年3月末までには完成させ、全国の高専で使用してもらいたい考えだ。

 米アップルや米グーグルを目指し、起業も期待されるが、齋藤さんは「一生エンジニアでいたい」と現場志向が強い。一方で望月さんは「エンジニアとして一人前にはなれても超一流になるのは難しい。現場と経営の橋渡し役になりたい」と語る。望月さんは近く知人が設立するIT企業の最高技術責任者(CTO)に就任する予定で、大きく一歩を踏み出した。
(千葉・中沖泰雄)
日刊工業新聞2017年7月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
米村准教授によると、Yone―laboのメンバーは「他の学生の憧れ的な存在」という。彼らの背中を追う学生が増えれば、木更津高専が輩出するセキュリティー人材にさらに厚みが増す。 (日刊工業新聞千葉支局・中沖泰雄

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