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立命館大の絶対的な強み、「多様性」はまだまだ進化する

吉田総長に聞く「人・モノ・金・情報が地球規模で動く変化は止められない」
立命館大の絶対的な強み、「多様性」はまだまだ進化する

立命館大公式ページより

 立命館大学の建学の精神は「自由と清新」。革新性を昔から重視してきた。2020年度までの中期計画「R2020」では「自分を超える、未来をつくる」をテーマに掲げ、教育の質の転換のほか、あらゆる側面で地球規模化する社会の求める水準の達成などを重点課題とする。吉田美喜夫総長はさらに長期的な展望を構想しており、学内のダイバーシティー(多様性)を進める。

 ―中期計画のR2020の手応えは。
 「予定した内容がほぼ達成できる。これに満足せず、30年度を見据えた次の計画を具体的に考え始めないといけない。18歳人口が減少し、高齢化が進んでいる。グローバル化もさらに進展していくだろう。一部で自国中心主義の動きもあるが、人・モノ・金、そして情報が地球規模で動く変化の時代は止められない」

 ―育成すべき人材像とは。
 「人工知能(AI)の進化で消える職業もある。変化に柔軟に対応でき、コミュニケーション能力が高いといった今後の社会で活躍できるような人材を育てる。問題に取り組む意欲や、課題を発見し、解決まで思いを巡らす能力も必要だ」

 ―教育方法はどう変わりますか。
 「例えば講義中心の授業の場合、準備をしなくても授業に出られる。知識の伝授としては効果的だが、これからは学生の自主性をいかに引き出すかを考えねばならない。議論を行う課題解決型の授業を中心とし、科目の精選も行う」

 ―国際化の進展は。
 「来年から米アメリカン大学との共同教育課程『ジョイント・ディグリー・プログラム』を始める。オーストラリアの国立大学とは双方の学位が取れる『ダブル・ディグリー』を検討中だ。23年度までに留学生の受け入れや日本人学生の留学推進、教員・職員の国際化を進める。外国人に加え、外国で学位を取得した日本人教員の採用を進め、合わせて50%以上とする」

 ―多様な人材の活躍が期待できます。
 「理系を中心に、女性の研究環境が整っている先進国で学位を取得した女性研究者は多い。外国の学位取得者の呼び込みは、同時にダイバーシティー充実のために重要な研究者の女性比率も高められる。女性研究者が働きやすくすることで、学生から見たロールモデルともなる」
吉田美喜夫総長

【略歴】
吉田美喜夫(よしだ・みきお)77年(昭52)立命館大院法学研究科博士後期課程単位取得退学、同年立命館大法学部非常勤講師。81年産業社会学部助教授、90年法学部教授、04年法務研究科教授。15年総長。法学博士。岐阜県出身、67歳。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
立命館大学は「世の中から提起される課題を自ら解決していく」(吉田総長)姿勢で、来年度新設の「食マネジメント学部」などユニークな研究を進める。47都道府県全ての出身学生が所属し、学生・教員とも半数が外国籍の姉妹校・立命館アジア太平洋大学も持つ。立命館大の研究と人の多様性は大学間競争を生き残る強みだといえる。 (日刊工業新聞大阪支社・安藤光恵)

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