初号機から40年、気象衛星「ひまわり」の進化は止まらない

積乱雲の分解能細かく、落雷予測の精度向上。後継機の準備も

 静止気象衛星「ひまわり」初号機の打ち上げから、14日で40年がたつ。ひまわりの進化は気象現象の高精度な観測を実現してきたほか、民間気象会社のサービス向上といった好影響を与えた。一方で気象庁では、さらなる精度向上を目指し、2029年ごろに運用を始める後継機の開発に向けた準備を進めている。

 1977年に打ち上げた初号機は可視光で観測する画像が1種類しかなく、白黒での提供に留まっていた。現在軌道上にある8、9号は最先端の観測技術を持つ可視赤外放射計(AHI)を搭載。静止気象衛星として世界初のカラー画像を観測できるようになった。

 初号機と8、9号機の空間分解能を比べると、可視画像が1・25キロメートルから0・5キロメートルに、赤外画像が5キロメートルから2キロメートルと細かくなったことも特徴だ。積乱雲が急激に発達する様子を判定しやすくなったことなどから、局地的な大雨をもたらす可能性がある雲を見分けやすくなった。

 ひまわりを使った技術開発も進む。気象庁は、運用中のひまわり8号の観測データを使い、夏季の日中に発達する積乱雲を従来より早く検出する技術を開発した。

 気象庁の検証では、これまで落雷の可能性を直前まで通知できなかった事例のうち、約33%で通知速度を平均20分程度の向上することができた。気象庁は開発した技術を、10分―60分先までの雷の発生を予測するサイト「雷ナウキャスト」へ19日に導入する。

 雷をもたらす危険性がある積乱雲は、5分―10分で発達する。ひまわり8号は時間分解能が2・5分と高性能なことから、予測精度の向上につながった。

 これまで雷ナウキャストには、地上のレーダーと雷監視システムの使用に留まっていた。こうしたレーダーでは時間分解能が10分のため、落雷直前までその可能性を通知できないことがあった。

 ひまわりの高性能化は、民間気象会社にも恩恵をもたらした。日本気象協会では、ひまわりが撮影した画像を使い、日射量や太陽光発電の出力を推定・予測するサービス「SOLASAT」(ソラサット)シリーズを提供している。

 このサービスは、ひまわり7号が運用中の15年4月に開始。観測可能な波長(バンド)は7号が5種類だったものの8、9号では16種類に増加。従来よりも小さな雲も識別できるようになり、詳細な日射量分布を推定できるようになった。

 一方、29年ごろには、ひまわり10号の運用が始まるが、現在はその開発に向けた準備が進む。気象庁は、国内外のメーカーが開発中のカメラやセンサー、衛星バス(基幹系)などを調査している。

 16年11月には、ひまわり8、9号とほぼ同じ性能を持つ米国の次世代気象衛星「GOES(ゴーズ)―Rシリーズ」が打ち上げられた。

 気象庁観測部気象衛星課の吉崎徳人衛星データ利用技術開発推進官は「宇宙から雷の光を捉えるセンサーが搭載されている。防災上どのように役立つのか注目したい」と、10号開発の参考にしたい考えだ。
(文=福沢尚季)

日刊工業新聞2017年7月14日

日刊工業新聞 記者

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07月15日
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ひまわりの高性能化は、通信手段と計算機の進化によって実現した。10号にもさまざまな最先端技術が導入されることで、より高精度な気象観測の実現が期待されている。
(日刊工業新聞科学技術部・福沢尚季)

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