神戸の中小、外国人留学生「採用大作戦」。海外展開の布石にも

県内大学卒業生の7割が県外に就職する現実

 兵庫県の中小製造業が外国人留学生の採用に乗り出している。人手不足の解消に加え、海外現地法人の幹部候補としても期待する。井戸敏三兵庫県知事が「県内大学卒業生の7割が県外に就職する」と指摘するように、兵庫県では20―30代前半の人口流出が課題。県内企業にとっても悩みの種だ。そのため留学生を積極採用し、後継者の育成や技能継承、さらにはグローバルでの事業拡大の一助としたいところだ。

 「11人に説明し、うち3人が個別企業説明会に申し込んだ」―。流通科学大学(神戸市西区)とみなと銀行が6月に共催した「外国人留学生向け合同企業説明会」。そこに参加した西山酒造場(丹波市)の採用担当の安江香大阪事務所リーダーは手応えを感じた。同社は160年以上続く酒蔵。清酒「小鼓」が主力で、世界24カ国に輸出しているため、「酒造りを知った上で将来的に輸出に関わる業務も担える人材を」と期待する。

 流通科学大では中国、ベトナムからの留学生が多く学ぶ。就職部の辻田勝治部長は「ベトナムなどに現地法人がある会社から、将来の現法幹部候補や、現在日本で働くベトナム人のケアができる学生を採りたいという声が多い」と、説明会を開催した理由を話す。

 みなと銀行も外国人採用に悩む企業を多く顧客に持つことから、服部博明頭取は「県内の就業人口を増やし中小企業の生産性向上を支援したい」と話す。

 丸十(加古川市)は精密板金加工を手がける。16年春、ベトナムに生産工場を新設。松尾將勝社長は「現在ベトナム人実習生が12人おり、通訳や手順書作成などを担える人材が必要。ベトナム人正社員も2人いるが手先が器用で覚えが早く即戦力」と評価。人材を拡充し、ベトナムをはじめ東南アジア諸国連合(ASEAN)での事業拡大を見据える。

 一方、精密板金加工を手がける大島(三木市)は10年前から延べ20人のベトナム人実習生を受け入れてきた。ベトナムの生産拠点に実習生を送り込んできたが「ベトナム工場も10年間で事情が大きく変わり、日本での実習後に帰国してすぐに管理・監督できる立場には就けない」(宮田隆宏営業部次長)という。そのため国籍を問わず正社員採用に注力することにしたという。

 日本の就職活動に不慣れな留学生は中小企業の求人情報を得にくいのが現状。説明会では「板金とは何か」という質問の回答だけでほぼ時間が経過してしまった企業もあった。

 流通科学大の辻田部長は「留学生の約半数は日本企業への就職を希望するが、なかなか難しいのが現状」と頭を抱える。服部みなと銀頭取が「(今回の取り組みを)県内の他大学にも広めていきたい」と意気込みを見せるように、留学生の採用拡大には継続的な取り組みが必要となる。
(文=神戸・大原佑美子)

日刊工業新聞2017年7月10日

尾本 憲由

尾本 憲由
07月14日
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単に日本人が採れないから外国人留学生、というのではうまくいかないだろう。その企業がどれだけ留学生の母国に根付いているのかが問われそう。グローバルだけど、ある意味とことんローカル。そんな草の根的な強さを期待したい。

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