水星探査、高温の極限環境に挑む

JAXAとESAの計画着々と進行

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)が2026年の観測を目指す水星探査計画「BepiColombo」(ベピコロンボ)が着々と進行中だ。JAXAは水星の磁場を調べる探査機「MMO」を担当。両機関による観測を通じ、水星の表面や磁場のデータから水星の形成や進化に迫る。太陽に最も近く高温の極限環境にある水星の解明が進めば、惑星の標準モデルが再構築されるかもしれない。

 計画で使う機体はMMOのほか、ESAの水星表面探査機「MPO」、イオンエンジンを搭載し、MMOとMPOを水星周回軌道まで運ぶ「電気推進モジュール」(MTM)、MMOを太陽光から守る「MMOサンシールド」で構成。18年10月に欧州のロケット「アリアン5」で打ち上げる。

 天体の重力を利用し軌道を変更する「フライバイ」を繰り返すことで水星に徐々に近づいていき、25年12月の水星周回軌道投入を目指す。その後、MMOとMPOを分離し、1―3カ月の初期運用を経て本格運用を始める計画だ。

 JAXAの開発するMMOは、五つの科学観測装置を搭載し、水星の固有磁場のほか、磁場や太陽風などによる周辺の環境、大気の観測などを実施する。

 重量は280キログラム。水星近傍を楕円(だえん)軌道で周回する。水星との距離は最も近い時に590キロメートル、最も遠い時で1万1600キロメートルとなり、周期は9・3時間となる。

 水星の昼の表面温度は400度Cに達するとされている。そのためMMOは耐熱設計として、鏡を多用した宇宙空間への放熱機構や、チタンを用いた高温断熱材の使用など、衛星の温度上昇を抑える工夫を随所に施している。

 MMOの開発には東北大学や名古屋大学など国内外の12大学・研究機関、三菱重工業やNEC、明星電気などが参画している。MMOの日本側の開発投資総額は154億円となる。
JAXAの水星磁気圏探査機「MMO」(JAXA提供)

日刊工業新聞2017年7月10日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
07月11日
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水星は岩石や金属などの固体でできた地球型の惑星。近年、観測精度の向上などで太陽系外の「生命居住可能領域」(ハビタブルゾーン)で地球型惑星が多数発見されている。プラズマ粒子の観測装置の責任者である齋藤義文JAXA宇宙科学研究所教授は、「水星を詳しく調べることで、太陽系外の惑星がどのように成り立っているか予測できるのでは」と期待する。
(日刊工業新聞科学技術部・冨井哲雄)

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