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官僚たちの夏、次官・局長級人事まるっと早わかり

サプライズは?
*経済産業省
 経済産業省は4日、菅原郁郎事務次官(昭56年入省、60)の後任に嶋田隆通商政策局長(昭57、57)を登用するなどの幹部人事を決定した。対外交渉を担う“ナンバー2”ポストの経済産業審議官には、柳瀬唯夫経済産業政策局長(昭59、55)を充てる。次官の待機ポストと言われてきた経済産業政策局長に糟谷敏秀製造産業局長(昭59、55)が就く。一方、昭63入省組の2人を局長級に抜てき。合計13人を入れ替える大幅な幹部人事となった。

 5日付(経産審は14日付)で発令。世耕弘成経産相は「年次にこだわることなく適材適所の人事を実施する」と説明。次官に登用した嶋田氏については「原子力事故対応や通商政策をけん引してきた」と評価した。

 留任は高橋泰三官房長、末松広行産業技術環境局長、日下部聡資源エネルギー庁長官のみ。日下部長官は3年目に入る。かねて次官候補の筆頭格と目されてきた柳瀬氏は経産審議官に就き、次官レースからは一歩後退したとみられる。

 昭63入省の飯田祐二官房秘書課長(54)を総括審議官に、同じく藤木俊光資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長(51)を商務・サービス審議官に登用。飯田氏は局長職と課長職の間の「中二階」を飛ばしての局長級就任となり、将来の有力次官候補に浮上した。

 外局では、関東経済産業局長の経験を持つ安藤久佳商務情報政策局長(昭58、57)が中小企業庁長官に、宗像直子首相秘書官(昭59、55)が特許庁長官に就く。

 特許庁長官に女性が就任するのは初。安倍政権は女性活躍推進を掲げており、経産省人事にも反映された形だ。

 一方、貿易経済協力局長から商務情報政策局長となる寺澤達也氏(昭59、56)は今後、東芝の半導体メモリー事業売却などの課題に対処していく見込み。

 エネ庁次長から製造産業局長に就く多田明弘氏(昭61、54)は政府のIoT(モノのインターネット)戦略「コネクテッド・インダストリーズ」を前進させる重責を担う。

【素顔】事務次官に就任する嶋田隆氏


 通商政策局長からの事務次官登用は異例だが、省内では「極めて順当」(幹部)との評価。工学部卒で事務官を勤め上げた異色の経歴を持ち「利害に関係なく動ける」(経産次官経験者)実力の持ち主。財務相や経済財政相を歴任した故与謝野馨氏は嶋田氏を懐刀として大臣秘書官に合計5回も起用。「頭の構造が似ていたのか、相思相愛の関係だった」(経産省OB)。

 福島第一原子力発電所事故後、自ら東京電力の取締役に名乗りを上げ、経営改革に全精力を傾注。「普通、次官を狙おうという人間が火中の栗を拾おうとは思わない。あらぬ中傷を受けることも十分想定できるからだ」(同)。

 おとこ気とデジタルな理系の頭脳を兼ね備え「良くも悪くも白黒はっきりとし、相手の意に沿わないことでも突っ走ろうとする」(幹部)一面も。部下に「10秒で説明して」と迫り、たじたじにさせることもあるという。

 この1年は保護主義に対抗する21世紀型通商政策で見せ場をつくった。大物次官としての強いリーダーシップが期待される。(文=鈴木真央)

◆事務次官
嶋田隆氏 82年(昭57)東大工卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年官房政策評価審議官、10年通商政策局通商機構部長、12年原子力損害賠償支援機構連絡調整室長、15年官房長、16年通商政策局長。東京都出身。

◆経済産業審議官
柳瀬唯夫氏(やなせ・ただお)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省入省。10年官房総務課長、11年官房審議官、12年首相秘書官、15年経済産業政策局長。静岡県出身。

◆総括審議官
飯田祐二氏(いいだ・ゆうじ)88年(昭63)東大経卒、同年通商産業省入省。08年経済産業政策局産業再生課長、11年官房参事官、13年資源エネルギー庁官房総合政策課長、14年官房秘書課長。埼玉県出身。

◆技術総括・保安審議官
福島洋氏(ふくしま・ひろし)87年(昭62)東北大院工学研究科修了、同年通商産業省入省。10年産業技術環境局研究開発課長、12年商務情報政策局ヘルスケア産業課長、13年官房参事官、15年官房審議官。埼玉県出身、54歳。

◆経済産業政策局長
糟谷敏秀氏(かすたに・としひで)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省入省。08年経済産業政策局企業行動課長、11年通商政策局通商機構部長、13年総括審議官、15年製造産業局長。兵庫県出身。

◆地域経済産業審議官
松永明氏(まつなが・あきら)86年(昭61)東大法卒、同年通商産業省入省。09年経済産業政策局産業構造課長、13年中小企業庁事業環境部長、14年官房審議官、15年内閣官房内閣審議官。埼玉県出身、55歳。

◆通商政策局長
田中繁広氏(たなか・しげひろ)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省入省。11年官房総務課長、13年通商政策局通商機構部長、14年内閣官房内閣審議官、15年総括審議官。東京都出身、55歳。

◆貿易経済協力局長
石川正樹氏(いしかわ・まさき)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省入省。12年貿易経済協力局貿易管理部長、13年官房審議官、15年防衛省官房審議官、同年防衛装備庁官房審議官。東京都出身、54歳。

◆製造産業局長
多田明弘氏(ただ・あきひろ)86年(昭61)東大法卒、同年通商産業省入省。11年経済産業政策局経済産業政策課長、13年官房政策評価審議官、14年資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、16年資源エネルギー庁次長。東京都出身。

◆商務情報政策局長
寺澤達也氏(てらざわ・たつや)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省入省。08年経済産業政策局経済産業政策課長、12年官房審議官、13年商務流通保安審議官、15年貿易経済協力局長。大阪府出身。

◆商務・サービス審議官
藤木俊光氏(ふじき・としみつ)88年(昭63)東大法卒、同年通商産業省入省。10年製造産業局産業機械課長、13年経済産業政策局経済産業政策課長、14年官房総務課長、15年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長。神奈川県出身。

◆特許庁長官
宗像直子氏(むなかた・なおこ)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省入省。11年通商政策局通商機構部長、13年官房審議官、14年貿易経済協力局長、15年首相秘書官。東京都出身。

◆中小企業庁長官
安藤久佳氏(あんどう・ひさよし)83年(昭58)東大法卒、同年通商産業省入省。09年首相秘書官、10年資源エネルギー庁資源・燃料部長、13年関東経済産業局長、15年商務情報政策局長。愛知県出身。

財務省


 財務省は4日、佐藤慎一事務次官(60)の後任に福田淳一主計局長(57)を充てるなどの幹部人事を決定した。政府の財政健全化目標に新指標が加わるなど、緩みかねない財政規律を堅持しつつ、財政健全化と経済再生をいかに両立させるかが最大の課題となる。発令は一部を除き5日付。

◆事務次官
福田淳一氏(ふくだ・じゅんいち)82年(昭57)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。09年官房参事官、11年主計局次長、14年官房長、15年主計局長。神奈川県出身。

◆官房長
矢野康治氏(やの・こうじ)85年(昭60)一橋大経卒、同年大蔵省(現財務省)入省。06年主計局調査課長、09年官房付兼内閣官房内閣参事官、12年主税局総務課長、15年官房審議官。山口県出身、54歳。

◆官房総括審議官
可部哲生氏(かべ・てつお)85年(昭60)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。11年主計局総務課長、13年官房総合政策課長、14年官房審議官、15年主計局次長。東京都出身、54歳。

◆主計局長
岡本薫明氏(おかもと・しげあき)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。04年主計局調査課長、09年官房秘書課長、12年主計局次長、15年官房長。愛媛県出身、56歳。

◆関税局長
飯塚厚氏(いいづか・あつし)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。11年理財局次長、12年内閣官房日本経済再生総合事務局次長、15年東海財務局長、16年国税庁次長。東京都出身、58歳。

◆理財局長
太田充氏(おおた・みつる)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。11年首相秘書官、12年官房審議官、13年主計局次長、15年官房総括審議官。島根県出身、57歳。

◆会計センター所長兼財務総合政策研究所長
土井俊範氏(どい・としのり)84年(昭59)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。11年国際局総務課長、12年外務省在米日本国大使館公使、15年官房審議官、16年国際局次長。大阪府出身、56歳。

◆国税庁長官
佐川宣寿氏(さがわ・のぶひさ)82年(昭57)東大経卒、同年大蔵省(現財務省)入省。13年大阪国税局長、14年国税庁次長、15年関税局長、16年理財局長。福島県出身、59歳。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
それぞれの官庁でサプライズはあったと思うが、個人的には経産省の人事。嶋田氏の次官は順当としてその次と見られたいた柳瀬氏が事実上、レースから後退する審議官になったこと。エネ庁長官の日下部氏も異例の3年目突入。少しずつではあるが「霞が関の常識」が通用しなくなってきている。

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