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「安倍・甘利」コンビが掲げたIoT・AI、そして。日本の“稼ぐ力”第二段階へ

成長戦略へ危機感強く。東京五輪をショーケースにロボットや自動走行を世界に発信
「安倍・甘利」コンビが掲げたIoT・AI、そして。日本の“稼ぐ力”第二段階へ

11日の産業競争力会議で熱が入る安倍晋三首相首相

 政府は11日に産業競争力会議(議長=安倍晋三首相)を開き、月末にまとめる成長戦略「日本再興戦略」の骨子案を示した。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)など最先端技術による社会構造変化を見据えた施策が大きな目玉。1月にまとめた「ロボット新戦略」の推進も織り込んだ。安倍首相は「新たなステージでIT投資や人的資本への投資によって我が国の生産性を抜本的に高める」と強調した。国内景気が上向きつつある中で、従来の景気刺激策から経済好循環を定着させる新たな段階に入る。

 骨子案では景気回復期における国内産業の生産性向上を主要な課題に位置づける。安倍首相は「イノベーションによって社会的課題と経済成長を同時に克服して、我が国が先進モデルになりたい」と述べた。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた具体的なプロジェクトも盛り込んだ。日本の強みである自動走行やエネルギー、ロボットなどの先端技術を生かして、日本全体を海外への“ショーケース”に変える。

 <解説>
 政府が骨子案を示した新たな成長戦略「日本再興戦略」は従来とは位置づけが異なる。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」により大手中心に企業業績が上向いており、今回は中長期的な日本の国際競争力強化に重きを置いた格好だ。甘利明経済再生担当相は11日に「昨年まではとにかく好循環を回すことだった。次は日本産業の稼ぐ力のフェーズ2だ。イノベーションを通じて付加価値力を高めていく」と語った。

 具体的には人工知能(AI)やビッグデータ、自動走行技術などによる社会構造変化を見据えた施策が大きな柱となる。また、2014年版に引き続いて、ロボット革命実現に向けた取り組みも加速する。

 ビッグデータやAIは大きな可能性を秘めるが、技術開発や利活用で米国や欧州の後塵を拝しているとの危機感が政府内で根強い。

 東京オリンピック・パラリンピック開催の20年に向けて、自動走行技術を生かした次世代都市交通システムなどの社会実装プロジェクトも目玉だ。ほかに、先端ロボット技術の社会導入や、再生可能エネルギー、蓄電池を最大限活用したエネルギーシステムの構築が織り込まれた。

 安倍政権の経済政策は12年の政権発足以来、着実に成果を上げてきた。大企業中心に最高益を更新し、賃上げも実現。ただ、これからは10年後、20年後に日本企業が世界で稼ぎ続ける基礎体力づくりが求められる。アベノミクスによる成長実現への正念場だ。
日刊工業新聞2015年06月12日1&2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
これを実現するために、どのようなスキルを持った人材が何万人必要という目標と、具体的な人材育成アクションをもたないと、結局実践するのは人。

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