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東京でも発見、「ヒアリ」との向き合い方

沖縄科技大・吉村氏「現時点で水際阻止には成功だが、息の長い対策も必要」
東京でも発見、「ヒアリ」との向き合い方

ヒアリ〈沖縄科技大OKEON美ら森プロジェクト(沖縄県外来種対策事業)提供〉

 強い毒を持ち刺されると死に至る恐れもある「ヒアリ」が兵庫県尼崎市、神戸港、名古屋港、大阪港に続き、東京港でも見つかった。国内への侵入や拡散に対してどのように対策をとるべきか。2016年から沖縄県のヒアリ対策事業に携わる、沖縄科学技術大学院大学生物多様性・複雑性研究ユニットの吉村正志研究員に聞いた。

 ―現在の状況をどのように分析しますか。
 「今のところ発見されたのは港湾地域内だけで(上陸後に)各地に移ったわけではない。行政が対応に動いており、水際での抑え込みに成功している。現在の監視・防除態勢を粛々と続けるべきだ」

 ―侵入経路は。
 「環境変化により巣を移すことがある。輸出用コンテナにヒアリの家族が入り込んだり、交尾後の女王が紛れ込んだりすることで外国から入ってくる」

 ―拡大を防ぐには。
 「コンテナを開けるエリアの隔離や、輸入品を輸送する場合の積み替えが有効。もし、ヒアリが見つかった場合はコンテナヤードに毒餌を置き駆除する。各対策の積み重ねでリスクを低減できる。外来種に対する意識を高めることも大切で、息の長い防除も必要だ」

 ―長期的対策とは。
 「台湾では03年にヒアリが発見された。根絶できなかったが広く啓発を強化し、発見通報の誤報率は10%を切っている。沖縄県でも16年12月から県内各地で長期モニタリングを行っている。物が動くことで外来種が入ることは仕方ない面がある。リスクはこれまでも、これからもある」

 ―外来種にはどう向き合うべきですか。
 「パニックにならず理性的な対応が必要。駆除しようとむやみに薬剤を散布することで在来種がいなくなり、外来種に有利な状況をつくることもある。緊急防除が必要な一方、外来種はヒアリだけではない。在来生物の多様性に配慮しつつ、リスクに折り合いをつけながら、ベストにより近いベターを目指して、法整備など社会で合意形成する必要がある」
沖縄科学技術大学院大学・吉村正志研究員
日刊工業新聞2017年7月7日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
「駆除しようとむやみに薬剤を散布することで在来種がいなくなり、外来種に有利な状況をつくることもある」というのは、重要な示唆だと思います。ヒアリへの対応は今後さらに過熱しそうな気がしますが、社会が“熱しやすく冷めやすい”対応を取るのではなく、外来種への全般的な関心を高めることが必要です。

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