「光学と精密技術はなくせない」 ニコン社長に再生の道を問う

牛田社長インタビュー「構造改革はあらゆる可能性を排除しない」

 ニコンは半導体露光装置事業の止血など、構造改革を着実に進めつつある。ただ、看板のカメラ事業は急激な市場縮小に苦しみ、薄型ディスプレー(FPD)製造装置に頼る一本足の状態から脱却できていない。光学技術の進化を担ってきた半導体の旗を下ろし、同社はどこへ向かうのか。牛田一雄社長に聞いた。

 ―人員削減などで半導体事業を大幅に縮小しました。今後の方向性や市場動向をどう見ていますか。
 ¥「半導体装置は、売上高の増加を目指した先行開発や見込み生産が問題だった。身の丈に合った注文生産に方針を転換し、黒字化させる。一方、最先端の液浸露光技術は成熟しつつある。顧客との間で、積極的に投資をせずに5年は競争力を保てると確認した。また、IoT(モノのインターネット)には、多様な半導体が必要だ。過去に販売した装置のレンズやステージを交換するニーズがある」

 ―半導体装置は、光学技術を進化させてきた一面もあります。
 「ニコンの成長の軸は、光学と精密技術だ。なくすことはできない。2月に光学部品の生産を集約し、4月に各事業部内の光学設計業務をまとめた。まとめることで力になる。半導体装置向けに囲っていた技術を全体へ還元し、新規分野へも活用する」

 ―カメラ事業の方針は。
 「構造改革はあらゆる可能性を排除しない。製品面では、やはり一眼レフの中高級機で勝負すべきだ。ジャンルトップを狙い、売上高が下がっても利益を稼ぐ。スマートフォンで育った世代には、性能面で他社に差をつけた“ニコンらしい”ミラーレスカメラを出す。産業用レンズ技術を活用し、レンズの性能で圧倒したい。一方で、遊び心も必要だ。『女性が使いやすい一眼レフ』などのプロジェクトがあっても良いのではないか」

 ―FPD製造装置が全社の業績を支えています。
 「FPD装置はパネルの大型化と、中・小型パネルの高精細化が進むことで、ニコンの時代が戻る。販売拡大を見込むが、これだけに頼るのはバランスが悪い。ヘルスケアを伸ばし、一本足から脱却する。細胞の受託生産ラインを2017年中に稼働させるほか、他社との協業で眼底カメラ向けに眼疾患の判定を支援するソフトウエアを開発している。19年度以降の成長戦略の中で本格化させる」

 ―経営体質を改善する仕掛けとして、ROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を導入しました。
 「指標によって各事業の状況を見える化する。(現場の)最前線と経営トップをつなぐ情報の神経系を通したような形だ。経営判断をスピードアップできる。短期的な改革で終わるのではなく、5―10年先に従業員が誇りを持てる会社にする」
(聞き手=梶原洵子)

日刊工業新聞2017年7月6日

日刊工業新聞 記者

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07月07日
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高度な光学・精密技術を持つ企業は世界的に少なく、この点でニコンの競争力は高い。問題は、その技術をどこに注ぐか。カメラは市場が縮小しており、伸びる市場への足がかりづくりが急務だ。眼疾患の判定を支援する製品などの成長の芽は、一つだけではカメラの穴を埋められない。他社との連携も含め、光学・精密技術の“出口”を増やす必要がある。
(日刊工業新聞第一産業部・梶原洵子)

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