「MRJ」債務超過、三菱重工の財務は大丈夫か

小口CFOに聞く「1兆円の調達余力は確保している」

 三菱重工業の財政健全化が着実に進んでいる。多額の投資を継続しながらも、フリーキャッシュフローは7年連続でプラスを達成。2009年度に1兆4953億円あった有利子負債も、16年度で約9255億円まで圧縮した。今後も激化するグローバル競争に備え、財務基盤の強化により成長原資を確保していく考え。小口正範取締役常務執行役員兼最高財務責任者(CFO)に今後の戦略や展望を聞いた。

 ―大型客船での巨額損失や米原子力発電所事故をめぐる巨額賠償など、一部の経営リスクが収束しました。
 「財務的に大きなインパクトのあった大型客船や米国の原子力発電事故をめぐる仲裁が成立し、ノド元に刺さったトゲが二つとれた。財務的にもさまざまな手を打つことで、結果的に格付けもシングルAマイナスを維持でき、財務面での評価が大きく崩れなかったと考える」

 ―M&A(合併・買収)など外部資源の活用をどう考えますか。
 「開発中の小型旅客機『MRJ』のような浪人中の息子を抱えている中でも、勝負するところは勝負しないと。最低1兆円は自由にできる会社であるべきだ。現在、エクイティ(株主資本)は約2兆円で、デット(負債)が同9300億円なので、1兆円の調達余力は確保している」

 ―MRJ開発を担う子会社の三菱航空機は、債務超過の状態が続いています。
 「機体開発が完了し事業会社化する際に、債務超過のままでは良くない。ただ、製造は三菱重工が担当し、与信の部分ではある意味、三菱重工と三菱航空機は一体だ。三菱重工は資金支援もしているので、事業面から見ても債務超過は実質的に問題ない。三菱航空機には会社の健全性を念頭に、厳しく運営してほしいと伝えている」

 ―18年度までの中期経営計画で掲げた2000億円のフリーキャッシュフロー創出は、すでに達成しています。
 「キャッシュフローは00年から10年間の平均値でマイナスだったが、改善に本腰を入れてからは劇的に変化した。目標は達成したがこれにとどめるつもりはない。バランスシートから生み出すキャッシュは徹底的に搾り取る。キャッシュ・コンバージョン・サイクルも100日を超えていたが、実質的に70日程度と国内製造業の平均値まで短縮できた」
(聞き手=長塚崇寛)

日刊工業新聞2017年7月6日

長塚 崇寛

長塚 崇寛
07月06日
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「経営者はドリーマー(夢追い人)で、CFOはリアリスト(現実主義者)」というのが小口CFOの持論。経営リスクを確実につぶしつつ財務体質の改善にまい進する。宮永俊一社長の悲願である売上高5兆円の達成には、数字とにらみ合いながら成長への打ち手を準備するリアリストが欠かせない。

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