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【世界に誇るテックベンチャー#06】SmartHR

中小から大企業まで労務手続きをクラウドで。宮田昇始社長インタビュー 
 ―起業の経緯について。
 「インターネット系のベンチャー何社かで働いていて、最後に在籍した会社に勤めていた時に「ハント症候群」という珍しい病気にかかり、車いす生活になった。目も閉じられずセロテープのようなものをつけて眠るような状態。医者からは8割方治らないと言われ、自分を見つめ直すきっかけになった。その後運良く病気が治ったが、若いうちに何かやろうと思いたって友人と会社を作った」

 ―社会保険・雇用保険の書類を自動作成し、Webから役所へ申請できるクラウドサービスを思いついたきっかけは。
 「起業から数年間は受託開発などで食いつないでいたが、今のサービスをやろうと思ったのは2年前。その時たまたま妻が妊娠9カ月で、自分で産休の書類などを書いていた。妻が勤めていたのは従業員10人くらいの設計事務所で、中小企業では従業員に社会保険の手続きをさせている企業が多いことが分かった。その分野を便利にするソフトウェアがあまりなかったことが開発のきっかけとなった」
 


 ―ユーザー企業の状況については。
 「当初は従業員数10人未満の企業からニーズがあると思っていたが、100-300人規模の企業からの引き合いが多い。直近では従業員8000人規模の企業への導入も決定。業種についても飲食チェーン、アパレル業、宿泊業をはじめ、珍しいところでは農園、寺院、新聞社にも広がっている」

 ―製品・サービス領域の拡大など、今後の成長戦略については。
 「製品のラインナップでいくと、なるべく尖っていきたい。というのも、最初は手広くやっていきたいと思っていたが、それは難しそうだと考えるようになった。勤怠管理や給与計算など周辺領域に手を広げてしまうと、(製品・サービスが)中途半端になるということが分かってきたので、当面は社会保険・雇用保険の手続きと、人事マスター(従業員データベース)機能のところに絞っていく。これが効を奏し、従業員1000人を超える企業への導入も増えてきている。今後は数万人規模でも対応できるようにしていきたい」
(聞き手=宮里秀司)
【会社概要】
2013年1月に創業。15年11月、クラウド人事労務管理ソフト「SmartHR」の提供を開始。17年6月に利用企業数が5000社を超えた。7月4日には社会保険の「算定基礎届」の電子申請機能を公開する。
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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
数ある企業向けクラウドサービスの中でも、競合がほとんどいない社会保険・雇用保険の手続きに特化したところが成功の秘訣といえるでしょう。周辺領域にも手を広げていきたいところですが、あえて主力サービスに磨きをかける戦略をとっています。今後は、顧客対応を含めたサービス品質の維持・向上が求められます。

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