はだし感覚で走れる靴下、Made in Japanでも戦える

昌和莫大小・井上社長「素材も編み方も違う。競争力が保てる」

 海外製品が約8割を占める靴下市場。中国の人件費が上昇すればベトナム、その後ろにはミャンマーも控え、安さでの戦いは難しい。デザイン性の高いブランドのOEM(相手先ブランド)生産に特化し成長した昌和莫大小(メリヤス)(奈良県広陵町、井上克昭社長)は、次の一手として新市場創出に着手。2016年末にスーパー繊維を使った靴下を商用化し、教育現場とマラソンをターゲットに“靴下で外を走る”を提案する。

 ―開発のきっかけは。
 「海外から入ってこないものを、と考えていたところに、奈良県産業振興総合センターから声がかかり、畿央大学(奈良県広陵町)との産学官連携が始まった。ベアフットランニング(はだしランニング)や、はだし教育は体に良いが地面環境によっては足裏のケガのリスクが伴う。はだし感覚を維持しながら足裏を守られれば、新市場になると考えた」

 ―通常の靴下との違いは。
 「素材も編み方も違う。開発に当たっては産業用で使われる高強度のスーパー繊維を複数種試し、東洋紡のダイニーマ(現イザナス)を選定。靴下にするには収縮性がなく編みにくい特徴があったため、糸を独自に加工している。また糸の強さに針が負けないよう、編み機に改良を加えた。繊維と編み機があればつくれるものではないため、競争力が保てる」

 ―はだしは体に良さそう、とのイメージはありますが実際にメリットは。
 「はだし教育では、土踏まずの形成や筋肉、脳の発達をうながす。またランニングでは、靴の場合はかかと着地するのに対し、はだしではつま先着地になるため関節負担が軽減する」

 ―今後の展開は。
 「タイからの引き合いがあるなど、海外市場も見え始めた。また購入者から、ビーチでのフライングディスク競技『ビーチアルティメット』で使った事例なども聞き、思ってもみなかった市場が開けている。ベアフット用ではフルマラソンに耐えられる強度にめどがたったが、足裏のブレーキをよく使う人などで耐久性に個人差がある。このため島精機製作所のスペーサーファブリックで三重に編んだ改良サンプルを作成。年内に商用化する予定だ」
                     

(聞き手=東大阪・坂田弓子)

日刊工業新聞2017年6月27日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
07月02日
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耐摩耗実験による素材選定や小学校・幼稚園での着用実験など「産学官連携だからできたことが多い」と語る井上社長。はだし教育やベアフットランニングを躊躇(ちゅうちょ)していた人の参入ハードルを下げることに成功し「挑戦してよかった」と約3年の開発を振り返る。特にうれしかったのは子どもたちが楽しげに走り回る姿だという。はだし教育とはあくまで大人の観点。「子どもたちには、単純に土の感触の気持ちよさを味わってほしい」と笑みをこぼす。
(日刊工業新聞東大阪支局長・坂田弓子)

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