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【連載】国産木材でギター造りはじめました。(2)―天竜杉、栓の木を使って

【連載】国産木材でギター造りはじめました。(2)―天竜杉、栓の木を使って

Sakuwood MR-15 と佐野加奈さん(ミス日本みどりの女神) 撮影協力:秩父宮記念公園

■木をさがす旅
 私は2014年6月に徳島県の佐川銘木から高知ヤナセ杉のサンプルを手に入れました。柾目で木理が細かく揃い堅く軽いので驚きました。9月に海陽町に佐川銘木を訪れ、木取り(丸太から品質選定し製材する技術)が優れている事、貴重な銘木の数々に更に驚きました。
 15年前、蝦夷松を想定し石狩の青木ギターを訪ねると「北米の材を使っている」と。青木保之氏の卓越した技と地産材が一致する日が来ることを胸に刻みました。青木クラシックギターは甘い音色の絶品です。日本木材でギターや楽器を造っている職人は多く、北海道、三重、長野、静岡他各地で頑張っています。
 長野の『樹音』は様々な樹種でオカリナを造る素敵なブランドです。ギターを針葉樹で考えると、船材の日南飫肥杉、稀少な屋久杉、吉野杉、木曽桧、秋田杉、蝦夷松(トウヒ)等、柾目の『銘木』となります。
 
 2009年からアドバイザーをしている天竜T.S.ドライシステム(月齢伐採、天然乾燥の桧と杉)に今年1月に調査に行くと、北海道産の楓(メイプル)、セン(ジャパニーズアシュ)等のギターに適した広葉樹が倉庫の奥に積んであるではありませんか。持ち主の(公財)平野美術館に伺うと「趣旨に賛同するから使ってださい」と提供して頂きました。

■ギター職人との出会い
 35年前、札幌の山野楽器に勤めていた時、デザインしたギターを浜松の東海楽器製造で造ってもらったことがあったので、今年に入り2度工場へ伺いました。その時知り合ったのが東海楽器を卒業した松井正博さん(MATSUIギター工房)で、私の長年の想いと一流の職人の経験は多くを語らずともすぐに通じ合いました。
 栓の木とヤナセ杉の柾目で造る計画を立てると、天竜TSから「最高の天竜杉を提供します」と強くプッシュされました。このプロジェクトの大儀、は日本木材の付加価値向上と、楽器製造業界に光を当てること。なので、この1本はMADE BY 浜松で地理的表示を付し、地方創生に寄与する道を選びました。

■製造の旅
 木質形成を保ち含水率を7%まで下げる為には低温乾燥しかなく、材木加工業者セイリュウの木質燃焼炉で1ヶ月間調整しました。日本で生まれた木に魂を吹き込む行程は3ヶ月続きました。
 6月5日御殿場でギターの完成撮影の際、松井さんの奥様が「あんな主人は初めて見ました。工房から、違う!これでは駄目だ!と声が響いていたのです」と話してくれました。各分野での匠が結集する中、改めて音楽を奏でる事、心を表現する楽器を造ることは、マイナス点を次へ引き継がず昇華させるジェネレーターを自分の中に持つことだと実感。これがクリエイティブの本質であり、ジャパンブランドの精神だと学びました。
 1本のギターから得られたエヴィデンスは多岐に渡ります。昨年8月7日に創造再生研究会で『文化芸術から見た木材利用と伝播効果に関する報告書』を全国木材関係50余名に発表し、林野庁へ提出した通り、1本のギターは完成しました。
 名前は、ムーン・レヴォリューションN0,15(Sakuwood MR-15)と言います。


 【略歴】こみやま・まさあき 音楽・映像プロデューサー&ミュージシャンを経て、東京都都市緑化イベント、地域活性化イベント及び農林水産省広報企画等に立案参加。シンポジウムライブ「ライブ・ドリアード」主宰。オーガニックライフ提案ブランドSAKUWOOD代表。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
完成したギターは6月18日(水)16時~「スマートコミュニティJapan2015」内のイベント「ライブ・ドリアード2015」にてお披露目予定です!

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