中国政府、「鉄鋼強国」へ進化。改革の成果を他業種にも

日本の強敵に

 中国政府が進める国内鉄鋼業界の構造改革の成果が鮮明になってきた。中国は過剰な生産能力の削減や業界再編、さらに薄利多売型から高付加価値型への転換を促して国際競争力を高め「鉄鋼大国」から「鉄鋼強国」への進化を果たす考えだ。2016、17年と能力削減は順調に進んでいる。改革達成の目標である25年には、日本の鉄鋼各社の前に中国メーカーが強敵となって立ちはだかるかもしれない。

 「予想以上の速さで生産能力の削減が進んでいる。中国政府は本気だ」。日本の鉄鋼業界関係者は、改革の進展に目を見張る。

 中国鉄鋼業界の粗鋼生産能力は15年時点で年間12億トンと、実際の生産量を4億トン上回っていた。日本の年間生産量の4倍に匹敵する規模だ。

 これを踏まえて中国政府は、16年から5年以内に1億4000万トンの生産能力を削減させる方針を表明。加えて「地条鋼」と呼ばれる粗悪品を無許可で製造する年産1億トン規模の違法な設備を、6月末までに全廃させる考えを打ち出した。

 実行に当たっては各省に削減のノルマを課し、再就職支援で1000億元の基金を創設するなどの施策も推進。これらが奏功し、16年には年間目標4500万トンに対して、6500万トンの削減を果たした。17年も5月末時点で目標5000万トンの85%を達成した。

 中国は、急速な経済成長を遂げる中で、過剰なストック(生産設備や不動産在庫)を多く抱え込んだ。鉄鋼生産能力の削減はストック調整に向けた「サプライサイドの構造改革」の第一歩。

 軌道に乗れば非鉄金属や造船、石油、建材などでも改革を進める方針だ。地方政府も巻き込んだ一連の施策は、改革遂行への決意表明と言える。

 ただ、鉄鋼生産能力の削減は構造改革の序章にすぎない。中国政府が次に目指すのは不採算企業の整理と業界再編、高品位な製品を主体とする高付加価値産業への転換による国際競争力の強化だ。

 これに先立って宝鋼集団と武漢鋼鉄集団の大手国有2社が16年10月に経営統合し、粗鋼生産量で世界第2位の宝武鋼鉄集団が誕生した。「新会社で統合効果を実証し、業界再編に向けた政策に反映させる」(日本の業界関係者)狙いとされる。

 この間、中国のメーカーは自国で余った鉄鋼製品を低価格で輸出し、鋼材市況の悪化を引き起こした。市場関係者の間では「改革が進むことで当面は輸出が抑えられ、日本の鉄鋼業界にもプラスに作用する」との見方が強い。
             

(文=宇田川智大)

日刊工業新聞2017年6月30日

日刊工業新聞 記者

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07月01日
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半面、「長期的には日本の得意な高品位の製品分野で、強敵になる可能性がある」との指摘もあり、国内メーカー各社はさらなる差別化を急ぐ必要に迫られそうだ。
(日刊工業新聞第二産業部・宇田川智大)

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