有効求人倍率バブル期超え!「若手人材確保の3条件」

早大白木教授に聞く「自分の能力を高めてくれる企業を望んでいる」

 有効求人倍率がバブル期を超え、企業は人手不足に頭を悩ませている。経済成長を抑制する人手不足にいかに対処すべきか。早稲田大学政治経済学術院の白木三秀教授に処方箋を聞いた。

 ―企業は人手不足にどう臨むべきですか。
 「人材の『採用』と『活用』の両面で対応する必要がある。採用面では若年、女性、シニア層の各層ごとに対策を講じたい。新卒や留学生を含む若年層は自分の能力を高めてくれる企業を望んでいる。条件として、仕事の内容が興味深い、自身の能力が高まり上司がそれを認めてくれる、キャリアアップなど将来見通しが明るい―。企業はこの3条件を満たすことが求められる」

 「女性の活躍を促すため、子育て支援の環境整備も急ぎたい。出産後の職場復帰のあり方を工夫し、(仕事や勤務地を限定する)限定社員をさらに普及させるなど、女性の能力を十分に生かすことが肝要だ。さらにシニア層は65歳まで継続勤務が可能だが、健康なシニアは70歳くらいまで延ばす必要がある」

 ―人材の「活用」で留意する点とは。
 「企業の生産性向上につながる人材活用策が求められる。例えばITの積極活用により会議時間を短縮し、ウェブ会議も導入して社員の移動時間を減らす工夫など推進したい。また今のような景気拡張期であれば、能力・モチベーションが上がらない中高年社員を対象に処遇の手厚い早期退職を提示し、再就職先を斡旋するなどして、職場を活性化することも選択肢になる」

 「外国人活用については、そもそも留学生の多くが日本で就職しないことが残念だ。例えば中国の米系企業は優秀な人材には積極的に投資する。初任給は日本企業の2倍、入社間もなく海外研修を実施する企業が少なくない。一律ではない国内外の人材をいかに管理・処遇するか、日本企業はこのダイバーシティー(多様性)に対応しなければならない」

 ―中長期的に取り組むべき課題とは。
 「少子化対策と生産性向上が大きな課題になる。少子化対策については、政府が掲げる働き方改革の推進はもとより、社会保障制度改革にも踏み込む必要がある。若者が出産・育児をためらうのは将来に夢を抱けないからだ。財政健全化により社会保障の持続可能性を担保しつつ、年金などの負担の比重を若者から資産を持つ高齢者へと移す必要がある。若者の将来不安を解消することが重要だ」

 「生産性向上については、社員が新製品・新技術などのアイデアを発想しやすい企業にする必要がある。労働時間と余暇時間の区別を曖昧にせず、クリエイティブタイムとなるフリーな時間を増やすことが重要だ。疲れていては良いアイデアは生まれてこない」
白木教授

【記者の目】
 白木教授は、足元の人手不足の原因は技能のミスマッチによる構造的失業が増大したためだと指摘する。例えばIT人材へのニーズは高いのに、対応できる高度人材が少ない。教育訓練を推進することでスキルのギャップを埋める必要があると訴える。賃上げだけでは対処できないこの構造問題は早期に解消したい。
(聞き手=神崎正樹)

日刊工業新聞2017年6月30日

神崎 明子

神崎 明子
07月01日
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厚生労働省が6月30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は、43年3カ月ぶりの高水準となりました。

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