「頑張ってやっとできる数字」東電再建、“川村メソッド”通用するか

原発の事故対応と持続成長、相反しかねない目標のハードルは低くない

 23日に始動した東京電力ホールディングス(HD)の新体制は、川村隆会長の手腕に注目が集まる。福島第一原子力発電所の処理費用を賄うため、年間5000億円の利益を確保する必要性があるが、実現は容易ではない。日立製作所の経営を立て直した「川村メソッド」は、果たして通用するのか。

 「頑張ってやっとできるか、社員の能力をフルに発揮した『ちょっと上』にある数字」。川村会長は、新たな再建計画「新々・総合特別事業計画(新々・総特)」の目標達成の難しさを認める。

 新々・総特では原子力事業や送配電事業の他社との再編統合が焦点になる。原子力事業は再編を見据え、社内カンパニー化をすでに検討している。

 川村会長はカンパニー化の目的について、「責任と権限を明確にしたい」と語る。原子力部門では安全性の広報についてのトラブルがあった。「カンパニー内で(原子力と広報を)一つにするので、部門同士で情報が行ったり来たりすることがなくなる」としている。

 川村会長は日立製作所の再建で、ハードディスク駆動装置(HDD)の売却など聖域無き改革を進めたが、就任から100日で策定した経営計画の大枠で最も意識したのは本体の改革だった。まず、社内カンパニー制で独立意識を持たせた。

 社内カンパニーの弊害にも注意を払っている。過去の取材で川村会長は「(カンパニー制を)やり過ぎるとバラバラになるから『社会イノベーション』という旗を立てた」とふり返っている。権限を与えつつも、会社全体としての一体感を打ち出すことに腐心したことがうかがえる。

 東電HDは収益力確保のために、事業部門ごとの異業種や他電力との連携、再編を迫られる。東電グループとしての一体感を危惧する声もあるが、連結1000社の日立グループの経営のかじを取った川村会長の手腕が生かされることになるだろう。

 川村会長は独立心の強いグループ“御三家”のうち、日立電線と日立金属の統合にも成功。「創業100年で日立が初めて本社に求心力を持たせようとした試み」とも称された。

 電力部門では火力発電設備事業を、競合の三菱重工業と経営統合にこぎつけた。置かれている状況は違えど、グループ内の事業選別といった体制再構築や、他電力との再編統合を急ぐ東電にとっては重なるものもある。

 日立時代に改革案をしたためた「川村ノート」には、やり残したことが10個以上あったという。果たして、真新しい「川村ノート」には何が記されるのか。

 原発の事故対応と持続成長という、相反しかねない目標のハードルは低くない。
(文=栗下直也)

日刊工業新聞2017年6月28日

永里 善彦

永里 善彦
06月28日
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日立で実績のある川村会長が若い社長の大改革を支援する二人のタッグが動き出した。株主総会後の記者会見に続き、過酷事故を起こした福島県知事を訪問。第一原発の廃炉、事故の賠償実行が喫緊の課題だからだ。原子力事業をどうするか、現在、社内カンパニー化を検討中だが、将来を見据えれば、異業種や他電力との再編統合も視野に入る。とくに再稼働案件と将来の新規案件では考え方も電力各社で大いに異なり、全電力が一致した解を見出せるか疑問との声もあるが、そこは粘り腰で剛腕の川村会長に期待したい。原発の再編統合は、各電力とも遠い先のことと捉えていようが、市場での自由化の進展につれ、送電、配電、小売りで大変革が起こることを見越して川村―小早川体制が動き出した。

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