総合商社がAI・IoTをブリッジに横連携に動き出した!

「これまでは知見があっても全社的に生かせていなかった」

 商社が人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)に関わる新たな役職や部署を設置し、活用を本格化している。三井物産は5月に、グループ全体でAIやIoTを活用する役職「最高デジタル責任者(CDO)」を設置。丸紅も4月に、「IoT・ビッグデータ戦略室」を設置した。各社はAIやIoTといった先端技術を取り入れ、物流の迅速化や売電事業の効率改善などに生かし、投融資事業の採算性向上を狙う。新規事業の立ち上げなどにも生かせるとみている。

 三井物産が新設したCDOは、デジタル技術による生産性の向上や新事業の立ち上げを主導する役割で、ICT(情報通信技術)事業を管掌している北森信明常務執行役員が兼務する。三井物産の安永竜夫社長は「予見をもたず、いろいろなアイデアをリサーチして事業に置き換えるのが役割だ」と話す。

 丸紅はIoT・ビッグデータ戦略室の立ち上げに先行して、2016年秋から委員会を発足。各部門にどのようなデータの蓄積があり、何が可能か、テーマ設定なども議論した。

 同社の古谷孝之経営企画部長は「これまでは知見があっても全社的に生かせていなかった」と話す。今後は同戦略室が中心となり、物流や輸送機械などの分野で実証実験を実施。物流ではいくつかのデータを分析し、船舶の手配を効率化して、リードタイムを短縮する。また、輸送機械の分野も実証実験を通事、車両メンテナンスの効率化などを目指す。

 商社が手がける既存事業の中でも、IoTの活用による効率化が期待されるのは、電力などのインフラ関連事業だ。安永三井物産社長は「IoTで制御し発電ロスを減らせば、新たに発電するのと同じ規模の供給が見込める」と期待を寄せる。

 丸紅は天然ガス焚(だ)き複合火力発電所「中袖クリーンパワー」(千葉県袖ケ浦市)に、米国GEパワーが開発した産業向けIoTプラットフォーム「プレディックス」を18年3月に導入する。今後、丸紅が持つ国内外の発電所にプレディックスを展開し、予兆検知による発電機器の保守や運転の効率化につなげる。プラント運営全体を最適化し、コスト削減に生かす。

 三井物産と丸紅は機械学習のフレームワーク「リノーム」を開発したベンチャー企業、グリッド(東京都港区、中村秀樹社長)に出資している。同社には伊藤忠商事も出資しており、既存事業への活用のほか、人事や財務活動の効率化に生かす方針だ。
(文=高屋優理)

日刊工業新聞2017年6月21日

高屋 優理

高屋 優理
06月25日
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事業の範囲が広い商社にとって、部門間の連携や横展開は経営課題の一つ。AIやIoT活用を目的とした横断的な役職や部署を置くことで、こうした課題の解決につなげる。

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