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大変革、塑性・レーザー加工の次世代標準はどれだ!

MF‐Tokyoの歩き方、世界最新動向をチェック
大変革、塑性・レーザー加工の次世代標準はどれだ!

前回の「MF‐Tokyo」

 鍛圧機械と塑性・レーザー加工の国際展示会「MF‐Tokyo 2017 プレス・板金・フォーミング展」(MF2017、7月12ー15日、東京ビッグサイト)が間もなく開幕する。IoT(モノのインターネット)をはじめ、ロボットによる自動化や新材料の製品への本格適用など、世界の製造業は今、大きな変化点を迎えている。プレス機械に代表される塑性加工、板金機械のレーザー加工も例外ではない。世界の有力メーカーが最新技術を持ち寄るMF‐Tokyo。次世代の標準となるべく技術、製品をここで見ておくべきだろう。

 本題に入る前にMF‐Tokyoとは何か、を説明したい。鍛圧機械メーカーを中心とする業界団体、日本鍛圧機械工業会(日鍛工)と日刊工業新聞社が共催する2年に一度の専門見本市だ。同種の専門展は国内唯一だろう。今年で5回目と歴史は浅いが、いずれも隔年開催のドイツの「ユーロブレッヒ」、米国の「ファブテック」と並ぶ、この分野では世界3大見本市のひとつだ。

 開催ごとに規模を拡大し、今回は過去最大の265社(前回比42社増)・1669小間(同365小間増)で本番を迎える。前回は東京ビッグサイトの3ホールを使って開かれていたが、今回は4ホールでの開催に規模を拡大した。

 アマダホールディングス、独トルンプ、三菱電機、アイダエンジニアリング、コマツ産機、エイチアンドエフといった世界大手が集結する。詳しくは後段に記すが、業界の潮流つくる大手各社の展示は必見だ。中堅・中小企業ならではのユニークな機械を見るのも楽しいだろう。

IoT、各社が進化版を披露


 IoTは、MF2017の目玉の一つだろう。IoTはFA(ファクトリーオートメーション)事業を持つ三菱電機、グループ本体のコマツで建設機械向けのシステムで長い運用実績があるコマツ産機などが目立っている。

 三菱電機は、薄い金属の板を切断するレーザー加工機の保守や生産性を高めるサービス「iQ Care Remote4U(アイキューケアリモートフォーユー)」を提供中だ。同社サービス部門が、ユーザー加工機の停止時などに遠隔で状態を診断し、ユーザーに機械復旧の手順を示す。サービスマンが訪問する場合に比べ、圧倒的に早く再稼働できる利点がある。

 MF2017で同サービスの進化が見られるかはまだはっきりしない。少なくとも、ファイバーレーザー加工機の新製品「eX‐F D‐CUBESシリーズ」を出品するだろう。

 コマツ産機は、コマツが開発した建機の遠隔管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」によるプレス機向けのサービスを手がけてきた。MF2017では、工場をスマート化するコマツの生産管理システム「KOM‐MICS(コムミックス)」を、プレス機、板金機械に対応させ、披露する予定だ。

 板金機械で世界首位級のアマダホールディングスは、富士通と連携してIoTを本格展開する。アマダがユーザー先の加工機から生産にかかわるデータを集めて解析し、効率的な保守や効率の高い加工の助言をする。18年1月に日本でサービスを開始する予定で、MF2017で紹介するだろう。
前回の「MF‐Tokyo」

レーザー 革新技術盛りだくさん


 板金を切断するレーザー加工機は加工速度が速く、省エネルギーのファイバー方式の時代だ。苦手とされてきた厚い材料に対応させるため、ここ数年は高出力化の流れがある。

 アマダホールディングスは9キロワット機、三菱電機が8キロワット機を品ぞろえしている。会場では高出力化の流れを気に留めつつ、高速加工で必要性が増した材料の供給や取り出しといった周辺装置にも目を向けたい。

 ちなみにレーザー加工機ではないが、周辺装置でいえば、金属板を折り曲げるベンディングマシンとロボットの融合が盛り上がりつつある。

 ロボットが材料をつかみ、曲げ加工位置まで運び、加工、材料を置くという一連の流れを人間に代わり行う。アマダホールディングスのブースで実演がありそうだ。

 レーザー加工は、厚い軟鋼の加工に酸素を使わない無酸化切断がはやりそうだ。レーザー加工は通常、レーザー照射で生じる溶融物や蒸発ガスなどを除去する窒素や酸素を加工対象物(ワーク)に吹き付け、切断している。厚い軟鋼は酸素を使うが、この際に生じる酸化被膜が塗装や溶接の品質に影響してしまう。このため、手作業などで被膜を除去する必要がある。

 酸化皮膜が発生しない窒素を使いたいところだが、厚い材料には対応しない。独トルンプが出展する新型機は、厚い材料の窒素切断が可能。切断速度は厚さ4・5ミリメートルの軟鋼の場合、従来の二酸化炭素(CO2)レーザー加工機比で同約4倍の毎分14メートルと高速だ。

 ファイバーの時代と書いたが、ファイバーの次の世代の最右翼とされるのがDDL(ダイレクト・ダイオード・レーザー)方式だ。ヤマザキマザックは、板金切断向けで世界初とみられるDDL加工機「OPTIPLEX(オプティプレックス)3015DDL」を出展する。

プレス機、サーボと供給装置の同期技術


 自動車のルーフやボンネット、ドアなどのアウターパネル向けのプレス機は、1ラインが40億円にもなる自動車プレスの花形だ。

 アウターパネルの成形ラインを供給するプレス機メーカーは、世界でも数社。うち日本メーカーはアイダエンジニアリング、コマツ産機、エイチアンドエフなど。いずれもサーボモーターで駆動するサーボプレス機に強い。

 板金機械と同じく、材料供給をするフィーダーなど周辺装置の重要度が増している。プレス機は量産品を作ることを背景に生産性が重視される。

 要は1分間にどれだけの数を成形できるかが問われる。プレス機を最高速度で動かし、それに上手に追随する周辺装置が求められるのだが、サーボプレス機は動きが複雑なため、同期させるのが難しい。今や、この同期制御技術が最大の差別化ポイントの一つだ。

 アイダエンジニアリングは、昨年末発売した加圧能力150トンのサーボプレス機に、新型フィーダーを組み合わせたシステムを披露する。

 高生産性、省スペースが特長だ。コマツ産機は、他社が追随できない技術を搭載したという意味合いの「ダントツ商品」を出品する。

 昨年投入の小型サーボプレス機とフィーダーであり、「完全同期運転」を実演する予定だ。海外勢では「SEYI」ブランドで知られる台湾大手の協易機械工業も同期制御を紹介しそうだ。

新材料対応


 軽量化を目的に採用が進んでいる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)。これまで自動車では一部の高級車への採用にとどまっていたが、トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」のバックドアに採用されるまでになった。

 生産性、リサイクルなど解決すべき課題は多いが、有力な新材料であることは間違いない。CFRP成形は、エイチアンドエフ、川崎重工業グループの川崎油工、栗本鉄工所、榎本機工などが紹介するだろう。

 13日、14日にCFRPのプレス成形についてのシンポジウムが企画されている。 

 また、新しいプレス工法として注目されているホットスタンプ。焼き冷まし効果で鋼板の硬度を高める工法だ。欧州の自動車で活発に使われ、現在は日本の自動車メーカーが採用を拡大している。

 ホットスタンプ関連ではアミノ、世界最大手のスウェーデン、AP&Tなどが出展する。アミノは2年前のMF2015で実演し、注目された。
日刊工業新聞電子版2017年6月14日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
ここまで見所を出展予想も踏まえて書いた。いずれにしても会場には5年、10年先の仕事のヒントが落ちていることだろう。

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