『君の名は。』でも物語を盛り上げた名脇役の工芸品といえば?

着物の“名脇役”としても活躍

 色とりどりの絹糸を組み上げて作る組紐(くみひも)。色の組み合わせは無限に近く、職人の腕とセンスが問われる工芸品だ。かつては着物の小物として使われていたが、今は新しい用途を開拓している。

 「鎌倉時代の武具甲冑(かっちゅう)から江戸時代は着物の帯締めや帯揚げへ。そしてまた新しい商品へ。進化させることが、伝統技術を守ることになる」。龍工房(東京都中央区、03・3664・2031)の福田隆代表は、14年に認定された伝統工芸士としての使命をこう語る。

 着物の“名脇役”として歌舞伎界や茶道界から評価される龍工房の商品。純国産の絹糸にこだわり、糸作りからデザイン、組みまでを手がけている。

 大学時代はテニスに熱中していた福田代表が組紐の世界に入ったのは84年。雑誌の組紐特集に出会ったのがきっかけだ。奥州藤原氏第3代の藤原秀衡(ふじわらのひでひら)の棺の調査で発見された草木染の組紐の復元品を見て、組紐の美しさ、奥深さに気付き、龍工房の創業者である父親の後を継ぐ決心をした。

 デザイナーの川口英俊氏がデザインを手がけ、「津軽塗」とコラボしたボールペン「kulis(クーリス)〜くみひもうるしペン〜」は、ペン軸を通せるよう空洞になった組紐を使っている。絹の優しい感触と漆のつややかさを日常生活で味わえる。

 クーリスは高級日本旅館でフロントに設置するペンとして採用された。外国人客が多いホテルで、日本らしさの演出に一役買っている。

 組み目が美しいブレスレット「叶結びブレスレット」は福田代表の息子である福田隆太氏が考案した。普段、絹製品を身に付けない男性にも絹の良さを知ってほしいとの思いが込められている。

 ブレスレットは龍工房が誇る「伸縮性」や「締めやすさ」を出せる組み方の特徴が最大限生かされた製品。「これからも呉服業界だけでなく他業界とコラボレーションしていきたい」と福田代表は意欲を見せる。
新たな商品を作ることで、伝統技術は保たれる…と福田代表

【メモ】組紐の起源は大陸から仏教が伝来した時代との説が有力。平安時代には衣冠束帯(いかんそくたい)の紐に使った。鎌倉時代には丈夫なため武具の一部として活躍する。室町時代、安土桃山時代には茶道具の飾り紐として組紐が使用され、実用性だけでなく模様の美しさも注目されるようになる。帯締めの始まりは江戸時代後期。江戸深川の芸者衆が好んで着けた太鼓橋に似せた帯結びの流行とともに帯締めが用いられ、庶民の間でも定着した。

日刊工業新聞では毎週金曜日に「プレミアムクラフト」を連載中。日本各地に225品目ある伝統的工芸品。高くて日常で使えないイメージがあるが、実際に使ってみると、磨き抜かれた実用性の高さに驚く。海外出張するビジネスマンや訪日外国人の手土産としても改めて注目を集めている。デザイナーと連携した新ブランドの設立など、現代の多様な消費者ニーズに合った新たな動きも出てきた。

日刊工業新聞2017年6月16日

昆 梓紗

昆 梓紗
06月16日
この記事のファシリテーター

組紐は仏教が伝来した時からさまざまな場面で生活を彩ってきました。その歴史は前前前世どころではないですね。いまの生活にもさりげなく溶け込める工芸品だと思いますので、さらに用途が広がることを期待します。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。