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GEの人事担当役員が語ったCEO交代プロセスの全貌

優れた経営トップを指名するためにやってきたこと
GEの人事担当役員が語ったCEO交代プロセスの全貌

イメルトCEO(左)と次期CEOのフラナリー氏

 6月12日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の取締役会は次の最高経営責任者(CEO)としてジョン・フラナリー氏を指名した。これに際しGEのシニア・バイスプレジデントであり人事責任者を務めるスーザン・ピーターズ氏は、自身のLinkedInにおいて、今回のCEO指名をどのように進めたのかを人事責任者の立場から説明している。

<以下:スーザン・ピーターズのLinkedInより>

 GEの人事部門の責任者として、私は多様な業務をおこなっています。投資家のため、カスタマー、そして社員のため、私が責任をもつべき最も重要なことは様々な組織においてGEのリーダーを育成することだと考えています。

ベテランのリーダーを育てることにフォーカス


 とくにフォーカスをしているのはベテランのリーダーを育てるということ。そこで私はこれまでにリーダーシップを教育するため、キャリアの大半を注いできました。今日、私はこれまで取り組んできたなかで最も重要なプロジェクトをお知らせしました。それはGEの次のCEOを指名することです。

 ジェフ・イメルトは16年にわたりGEの会長兼CEOを務めています。GEの125年におよぶ歴史のなかで私たちにはわずか10名のCEOしかおりません。一人あたりの在任期間は12.5年。

 一方、2001年から2015年においてS&P500社のCEOの平均在任期間は8.8年です。従ってこれは今後のGEの行く末に大いなる影響を与えるために極めて重要な決断といえます。私たちには何百万人の投資家がおり、何十万人の社員がこのリーダーを見つめることとなります。

 今日、私たちが働く環境は、偉大なリーダーシップを求めています。最も影響力のあるリーダーは複数の環境や条件下で業務を推進することができ、誰が見ても混沌とした状況であっても、チャンスに変えていくことができなければいけません。

 これには勇気や最後までやりぬく力、そしてダメージをうけても立ち上がる力が必要です。こうした見方で私たちは次のリーダーを選ぶプロセスを構築し、取締役会は判断を下しました。

規律をもって後継者探しに6年以上を費やした


 GEにおけるあらゆる重要な意思決定を行うときと同様、私たちは宿題をおこないました。CEOの後継プロセスは慎重に検討されたというのは控えめな表現といってもよいかもしれません。私たちは、絶え間なく集中して、そして規律をもって後継者探しに6年以上を費やしたのです。

 それではどのように私たちはおこなったのでしょう。

 最初に、潜在的なCEO候補者がそのリーダーシップを発揮させることができるような立場に異動させるのには何年もかかるだろうと私たちは認識していました。そこで、私たちはこれまで以上に複雑で、かつストレッチできる新たな経験を学んでもらうよう狙いをもって主要なリーダーに異動してもらいました。

 2012年までに私たちはジョブディスクリプション(業務仕様書)を用意し、継続的にブラッシュアップさせました。私たちが知りうるこの世の中の環境、GEの戦略とカルチャーに基づき、次のCEOに求められる態度、スキル、経験は何かを考え抜いてきました。

100名を超える社外のリーダーをリサーチ


 100名を超える、社外のリーダーについてリサーチもおこない、さらに、今日において必要とされる属性の理解を学ぶために研究をしました。

 私たちは、社内・社外の研究成果をまとめ、次の偉大なるCEOにとって本質的なコンピテンシーである「企業において必要とされるリーダーシップ」をリスト化しました。

 私たちは、自身がすでに知っていることを実行することではなく、いかに早く学び、どのような経験をし、打ち克ってきたのかが、CEOの成功においてより重要だという理解をしていました。

 2012年には、GEの取締役会は社内の候補者を観察し、私たちの判断基準や複数のデータソースを活用して社内、社外両方の候補者を評価しました。

 私たちのデータは、数年分遡ることができ、グローバルでビジネスや組織を率いた実績や、その事業の具体的な成果、エグゼクティブレビュー、リーダーシップの内容、そして一緒に仕事をしているメンバーからのフィードバックなどに基づくものです。

 こうした慎重な検討の後、取締役会は、最も優れていると思われる後継者候補達を社内で選定しました。CEO候補者達はより大きく、より複雑な役割をリーダーシップをもって対応するよう継続的に付与され、CEOのようにGEにおいて最もリーダーシップを必要とされるポジションのためにトレーニングを重ねてきたのです。

 2013年、移行の時期が慎重に検討されました。私たちは事業の策定プロセスを検討し、事業ポートフォリオについて考慮をし、新たに任命されるCEOと退任する会長兼CEOとの間での適切な重複期間などについて検討を重ねました。

 この結果、4年前、GEの取締役会とジェフ・イメルトは、CEO交替の適切な時期として2017年の夏を目標とすることに合意したのです。

最終プロセスは面談


 最終プロセスは何であったか?それは面談でした。過去何ヶ月にわたって、GE取締役会は候補者達から直接、CEOの役割をどうみているのか、GEのこれからのビジョンをどう考えているのかをヒアリングをおこないました。

 候補者に困難な質問を投げかけ、彼らの考えにじっくりと耳を傾けました。例えば、

 ●あなたのリーダーシップチームは、あなたがチームをリードする方法についてもっとも評価できる点を、どのように説明するでしょうか?
 ●現在の環境で勝つためにはGEをどのようにポジショニングするのがよいと思いますか?
 ●資本の配分見直しや事業ポートフォリオの見直しを含め、あなたはどのような戦略的な変化を企てますか?
 ●あなたにとって継続することが必要と思われるGEのカルチャーの、最も有益な側面は何だと考えますか。逆に、何を変えようと思いますか?
 ●これまでに受け取った最も厳しいフィードバックは何でしたか?
 ●仕事上あるいは個人的な経験のどのようなものが、あなたのグローバルな視点の形成を助けていますか?
 ●あなたはどのように学びますか?

 取締役会は、次のCEOであるジョン・フラナリーはグローバルの経験を備え、学び続けることができ、強力な実行力を持っていると判断しました。

美点は人とのエンゲージとチームのけん引力


 ジョンはリーダーとして、力を与え、鼓舞するために必要な能力を備えていました。GEで30年以上にわたって、彼は大きく、じっくりと考え、適応力と弾力的な側面の両方を備え発揮していることを示していました。ジョンの美点のひとつはどのように人とエンゲージし、どのようにチームをリードしているかです。

 本日のアナウンスによって、大きな変化がおきますが、これはGEの取締役会とジェフ・イメルトが6年以上にもわたってきわめて慎重かつ綿密に計画をしてきた変更です。

 終わりに、この決定は株主のためのリーダーそして成果を提供することについておこなわれたいうことをご理解ください。ジェフ・イメルトはGEにとって、そしてこの一連のプロセスにおいて驚異的なCEOでありリーダーでした。

 株主のため、カスタマーやチームそして世界のために、シームレスな移行をし、事業成長を確保し、次世代のGEのリーダーと一緒に成長を必ず遂げることはとても重要なことですし、その一端を担うことができるのは大変な名誉だと考えています。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
これは必読です。企業文化は経営トップを選ぶプロセスに集約されると言っていい。しかもCEO交代直後に人事担当がLinkedIで公表し、それをオウンドメディアでも公開するという流れもデジタルトランスフォーメーションを実践してきたGEらしい。

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