切削工具メーカーが「携帯型心電計」で新市場に参入

ユニオンツール常務執行役員・小林末呉氏に聞く

 エンドミルやドリルなどの切削工具、測定器を主力にするユニオンツール。モノづくりに欠かせない製品を供給する同社は、製造業が日本から海外に拠点を移している現状に危機感を抱き、一般消費者向け事業に乗り出した。携帯型心電計がそれだ。スマートフォンで計測結果を確認できる手軽さから、高齢化社会を背景に需要拡大が見込める。同事業の陣頭指揮を執る小林末呉常務執行役員に見通しなどを聞いた。

 ―BツーC(対消費者)事業に参入した理由は。
 「製造業が日本から海外に拠点を移しているため、体力のあるうちに消費者向けビジネスを展開したいと考えていた。当社には測定器の技術があるため、その技術を応用して、人間が発している信号を利用する方向に向かうことができた」

 ―参入に際して、社内で反対意見はありませんでしたか。
 「特になかった。携帯型心電計はこれまでにない市場だったため、新市場を創造していく感覚でスッと入れた。認知されてくれば需要も増えると思う。具体的な数値目標はないが、測定器事業の次の柱にしていきたい」

 ―これまでの経緯と現状は。
 「もともと身につける心拍センサーとして開発。交感神経と副交感神経のバランスを心拍数でとらえてストレスの度合いをつかもうとした。大学や企業の研究者向けに売れたため、人の眠気を検知するアルゴリズムに発展させ、現在ではクラウド基盤を利用した家庭用の携帯型心電計『myBeat』として事業展開している」

 ―どのような普及策を考えていますか。
 「熱中症の予防対策に取り組む。建設・運送9社を対象に、約200人のモニター調査を実施して、作業者の心拍数から熱中症リスクを評価する。クラボウ、大阪大学、信州大学、日本気象協会とともに実施するが、当社は心拍センサー提供とプラットフォーム構築を担当する」

 ―温泉旅館が利用しているとも聞きます。
 「鹿児島県指宿市のホテルが『IT湯治』というパッケージを商品化して、携帯型心電計を活用している。宿泊客がチェックイン時に心拍数を計り、自律神経の動きを把握。砂風呂に入った後と比較するなど、ホテルでの活動を数値化。宿泊客が帰る際に、より健康になったと納得してもらうというコンセプトだ」
ユニオンツール常務執行役員・小林末呉氏

【チェックポイント】
 「農業や港湾関係者、高炉関係、保安・セキュリティーなどサービス業から問い合わせがある」と、小林末呉常務執行役員は話す。医療機器として認定を得ているため、労働安全衛生法の改正によるストレスチェック制度にも利用できそう。ただ、同社がメーンとするBツーB(企業間)向けと、BツーC向けでは営業活動が異なる。測定器事業の柱の一つに携帯型心電計を育成するには、早期に販売網などを構築できるかどうかがカギとなりそう。
(聞き手=南東京支局長・安久井建市)

日刊工業新聞2017年6月13日

松井 里奈

松井 里奈
06月14日
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工具・測定器を主戦場とする同社が、心電計というBtoC事業に参入したことにびっくりする方も多いのでは。しかし、モノづくり業界では、ここ最近本業で培った技(ワザ)を活かし、BtoC製品を生み出すという事例が続々と出てきている。高度なモノづくり技術で創り創り出される製品だけに品質は良いだろう。ただ、一番の課題は記事にもあるように、これまでと違う市場に対して「如何にして売るか?」が成否を分けるポイントになりそうだ。

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