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東京医科歯科大とソニーの「医工連携」はなぜうまくいったのか

『学の医』と『産の工』で役割分担、奥行きがわかるHMD生む
東京医科歯科大とソニーの「医工連携」はなぜうまくいったのか

HMDを使った内視鏡手術シーン(東京医科歯科大提供)

 医工連携で東京医科歯科大学とソニーが連携し始めたのは2004年とかなり早い。大学内にオープンラボを設置し企業が入居すること自体、先駆的だった。同社のメディカル事業ユニット立ち上げに先立ち、11年に包括連携協定を結んだ。

 最新医療テーマの勉強会、同社技術の学内展示会、教員の初期の研究提案支援など多様な活動を展開。共同研究は5年間で30件超、多くの学会・論文発表につながった。

 中でも同社技術者約50人が参加してきた教育プログラムは、同社のエレクトロニクス機器を民生用から医療用へ発展させるうえで力となった。講義で基礎医学や医療倫理を学ぶ聴講生型、1年間フルタイムで研究にも携わる研究生型がある。

 ここから実用化につながったのが3D(立体映像)の医療用ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)だ。内視鏡手術の医師が頭部に装着すると、手術患部の奥行きを高精細・高精度に把握でき作業が容易になる。

 センサーや画面切り替えのニーズに、同社技術者が応えて約2年でめどを付けた。「既存機器を使っていた教室が“開発マインド”を持つよう変わった」と木原和徳特任教授は強調する。

 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(東京都港区)の矢田博昭研究開発担当VPは、「工学部がある総合大学ではなく、今回のように『学の医』と『産の工』と役割分担できたのがよかった」と振り返る。同大はこれをモデルに、医療新規参入の別企業で包括連携の設計に動きだしていく。
日刊工業新聞2017年5月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
医工連携においては、その医師だけが使いたいという特注品なのか、潜在的なニーズがあるモノなのかを見極めることが大事になる。

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