大手商社、“脱資源”への次なる投資

アフターセールス・コンビニ・へルスケア、関与高める

 大手商社が資源から非資源の分野へ、事業資産の入れ替えを加速している。伊藤忠商事はヤナセに株式公開買い付け(TOB)を実施し、7月中にも子会社化する。三菱商事は2月に1440億円を投じ、ローソンを子会社化。三井物産も16年、パナソニックヘルスケアに540億円を出資するなど、非資源分野での大型投資が続く。資源価格の低迷を受け、市況に左右されない非資源分野の強化を打ち出しており、今後も非資源分野での投資が増えそうだ。

 伊藤忠商事はTOBにより、ヤナセへの出資比率を現状の39・49%から、最大65%まで高め、子会社化する。伊藤忠の国内外の販売店網を活用し、アフターセールス事業の強化を図る。取得額は最大で65億円となる見通し。伊藤忠は非資源分野の17年3月期の当期利益が3137億円と、商社でトップ。強みを生かし、さらに事業基盤を充実させる。

 三菱商事は2月にコンビニ大手のローソンを子会社化。三菱商事は16年3月期の当期損益が赤字に転落したことを受け、資源分野の資産を増やさず、非資源分野の資産を拡大する方針を打ち出している。ローソン子会社化は、その一環。

 三菱商事は4月から事業の分類を、資源・非資源から、事業系・市況系に変更した。従来の資源・非資源の分類だと、液化天然ガス(LNG)は資源に入るが、市況に左右されないと位置づけ、新たな分類では事業系に入れている。

 三菱商事は19年3月期までに、事業系・市況系の資産を7対3の割合に組み替えていく方針。垣内威彦社長は「最適なバランスの実現を目指す」とし、市況が下がっても赤字を回避できる体制を構築する。

 同じく16年3月期の当期損益が創業以来初の赤字となった三井物産も、5月に公表した中期経営計画で機械・インフラや化学品など、非資源分野の事業強化を打ち出している。

 パナソニックヘルスケアや米国大手不動産のアセットマネジメントへの投資など、非資源分野に大型投資を続ける一方、シェールガスの一部権益を売却。資産入れ替えが活発だ。

 三井物産の安永竜夫社長は「資源・エネルギー分野の事業がコアではある」と位置づける。その上で「今後は事業を絞り込まざるをえないので、案件数は減っていくことになる」と話す。
(文=高屋優理)

日刊工業新聞2017年6月2日



資源価格の上昇で業績は回復したが…


 大手商社6社の2017年3月期連結決算が9日出そろい、当期利益は原油や石炭など資源価格の上昇により、三菱商事と三井物産が黒字化し、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、双日は増益となった。エネルギーや金属など、資源分野を中心に全社が業績を回復したことで、前期に創業以来初の赤字に転落した三菱商事が、当期利益で伊藤忠を逆転し、業界トップを奪還した。

 金属部門の業績回復が全体の当期利益を引き上げた。三菱商事は金属部門の当期利益が1479億円の黒字(前期は3607億円の赤字)となったほか、三井物産も金属部門が1801億円の黒字(同1524億円の赤字)に転換。垣内威彦三菱商事社長は資源事業について「明確にコアを決め、資産を入れ替えた」と述べた。

 伊藤忠商事は15年に出資した中国国有企業のCITICグループからの取り込み利益の拡大などで、当期利益が最高となった。

 18年3月期連結決算業績予想の当期利益は、伊藤忠がCITICグループとの事業拡大などにより、前期比13・6%増の4000億円と最高を更新する。三菱商事、三井物産、丸紅、住友商事、双日は資源分野を中心に業績が回復するとみて、増益を予想する。
               

日刊工業新聞2017年5月10日

高屋 優理

高屋 優理
06月12日
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16年は資源価格の下落が各社の業績を押し下げ、“脱資源”を強く打ち出した。資源価格回復とともに、若干トーンダウンしている側面もあるが、中長期的に資源価格が大きく上昇するシナリオは描きにくい。今後も非資源への投資戦略が成長に欠かせない。

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