パリ協定で「中国が良心のリーダーになるだだろう」

WWFジャパン・小西雅子さんに聞く「日本企業は将来を見誤らないでほしい」

 米トランプ政権が、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱を決めた。パリ協定合意の立役者となった米国の離脱は、世界に衝撃を与えた。しかし、WWFジャパン気候変動・エネルギープロジェクトリーダーの小西雅子氏はパリ協定が転覆することなく、「経済をドライブする」と語る。日本政府や企業に求められる対応も含めて、離脱表明の影響を聞いた。

 ―WWFは米国がパリ協定離脱を公表した2日、抗議声明を出しました。
 「米国の判断は、ようやくパリ協定に合意した世界に冷や水を浴びせるようなもの。ただし、正式に離脱できるのは次期大統領選直後であり、すぐにパリ協定が転覆することはない。温暖化対策に積極的な米国の州はむしろ、対策を加速させる。影響はあるが、全体の方向性は変わらない」

 ―米国企業も次々と離脱反対を表明しています。
 「パリ協定は世界経済をドライブする。連邦政府が離脱しても、米企業はパリ協定の枠組みでビジネスすることになる。外国企業が脱炭素化の技術・事業開発に向かう中で、国内に奨励策がなければ米企業にも良くない」

 ―日本政府に求められる対応は。
 「日本は先進国だけの削減は不公平と主張し、京都議定書第二約束期間に参加しなかった。日本が求めた、すべての国が参加する枠組みがパリ協定であり、政府には米国が離脱をとどまるように強く訴えてほしい」

 ―日本の温暖化対策は緩みませんか。
 「石炭火力発電やクリーンコール(低環境負荷の石炭利用技術)開発が勢いづくと懸念している。実際は、トランプ氏が石炭復活を掲げても、シェールガス革命でガス価格が低下し石炭は競争力を失う。日本が石炭を推し進めると世の中と逆行してしまう。また新興国との貿易が拡大しており、パリ協定を尊重した外交が望まれる」

 ―日本企業の対応は。
 「将来を見誤らないでほしい。脱炭素技術を開発すると将来の市場を獲得でき、企業の存続性が強化される。パリ協定が始まる20年は、東京五輪・パラリンピックの年。世界が注目する大会で、日本企業に環境配慮がないと経営リスクになる」
WWFジャパン・小西雅子氏

【記者の目】
 国の交渉だけでパリ協定ができたわけではない。世界の都市、企業も脱炭素を支持し、合意の機運を作った。小西氏は「連邦政府が抜けても、米の州・都市はリーダーであり続ける」と語る。言い換えると、連邦政府の方針が全米を代表していないということ。日本政府や企業は振り回されず、着実に温暖化対策を進めるべきだ。
(文・松木喬)

日刊工業新聞2017年6月7日

松木 喬

松木 喬
06月10日
この記事のファシリテーター

トランプ政権のパリ協定離脱の波紋を知りたくて、2人の方にインタビューして掲載しました。記事に書き込めませんでしたが、小西さんは「中国が良心のリーダーになるだだろう」と話していました。
中国はパリ協定の約束を守る国として国際社会で存在感を増すでしょう。欧州も途上国もパリ協定の仲間です。温暖化問題に限らず、日本の外交に影響があるかもしれません。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。