次世代パワー半導体材料で酸化ガリウム急浮上

京大発ベンチャーがSBD開発

 次世代パワー半導体の材料の候補に、酸化ガリウム(Ga2O3)が急浮上している。電力変換効率に優れ、実用化が進む炭化ケイ素(SiC)より高性能で、生産コストも抑えられるという。京都大学発ベンチャーのFLOSFIA(フロスフィア、京都市西京区、人羅俊実社長、075・963・5202)が、Ga2O3製のショットキーバリアーダイオード(SBD)を開発。実用化の研究で先行するSiCや窒化ガリウム(GaN)を追い越そうと、事業化を目指している。

 FLOSFIAがGa2O3製SBDの試作開発に成功したのは2015年。電力変換効率に大きな影響を与えるオン抵抗を、SiC製SBDと比べて86%低減できることを確認した。さらにスイッチング時の電力損失を削減できることも実証。現在はこれらの研究成果を踏まえ、18年中の量産化に向けて準備中だ。

 一般的にGa2O3は、良質なP型層の作製が困難とされる。そのためPN接合による電界効果トランジスタ(FET)を実現できず、パワー半導体の材料として採用することは非現実的との見方が強かった。

 しかし同社では、16年にGa2O3と同じ「コランダム構造」を持つ酸化イリジウムでP型半導体の作製に成功した。N型のGa2O3と組み合わせてPN接合できれば、高性能なFETを実現できるという。同社はSBDに続き、FETの研究開発も進めている。

 同社の中核技術は京都大学の藤田静雄教授らが開発した「ミストCVD(化学気相成長)」にある。液体原料をミスト状にして基材に成膜する仕組みで、従来のCVDでは難しかった素材も扱えるのが特徴だ。

 非真空状態で成膜するため真空ポンプ装置が不要で、大幅な低コスト化や成膜面積の大型化などが可能になる。

 特に低コスト化への期待は高い。次世代パワー半導体として有力なSiCは、現在主流のシリコンと比べ圧倒的に価格が高い点が普及のネックとなっている。人羅社長は「Ga2O3ではシリコンと同等のコストで、SiC以下の電力損失を目指している」と力を込める。

 調査会社である富士経済(東京都中央区)は、Ga2O3の市場規模が25年に700億円に達し、GaNの市場規模を追い抜くと予想する。23年ごろにはSiCと比べても優位性が際立つとしている。人羅社長も「Ga2O3への期待度がここ1年で劇的に変わってきた」と話す。
(文=京都・園尾雅之)

日刊工業新聞2017年6月7日

日刊工業新聞 記者

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06月08日
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これまで産学官が研究開発や事業化に大規模な投資を続けてきたSiCやGaNに比べると、Ga2O3の研究は緒に就いたばかり。次世代パワー半導体の本命に躍り出るには、半導体メーカーなど各社が、これまで以上に研究開発などにリソースを振り向ける必要がある。
(日刊工業新聞京都支局・園尾雅之)

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