【連載】アジアに臨む・沖縄特区のモノづくり#01 工業統計に載るようになった!

製造業“不毛の地”のいま。半導体検査装置を直接輸出

 製造業が根付きにくく、かつては「不毛の地」とも言われた沖縄。だが、そこに根を張り、アジアに向けて枝葉を伸ばし“果実”を得られるようになった。その沖縄から内外を見据え、奮闘するモノづくり企業を紹介する。

 那覇空港から車で走ること1時間弱。沖縄本島中部、うるま市に着く。世界遺産・勝連城跡の近く、中城湾に面した埋め立て地に製造業が密集した地域がある。沖縄振興特別措置法に基づく特区「国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区」だ。その一画に沖縄県が整備する賃貸工場が立ち並ぶ。ここで県外からの立地企業が沖縄の優位性を生かしたモノづくりにいそしんでいる。

 沖縄の地理的立地はアジアの急速な経済発展を経て「日本の端」から「東アジアの中心」へ転換。那覇空港は東・東南アジアを貨物便で結ぶハブ拠点となった。また同集積地域は税制優遇などの制度によって製造業振興の素地が整えられた。

 工場に並ぶ大型マシニングセンターや旋盤、レーザー加工機、また隣室では完成品の精密機器が出荷を待つ―。沖縄先端加工センターは2012年12月、ボトリング設備大手の澁谷工業の全額出資で設立した。プラント事業とメカトロ分野が同居し、澁谷工業向け部品加工や半導体分類検査装置(ハンドラー)などの製造を行っている。

 工作機械による加工と機械の組み立てが併存するのは、この地区でも珍しい。しかも加工した金属部品は、一部だが製品に使用している。目指す姿はメーカーとしての自立だ。林茂彦製造部長は「親離れ」と気概を表現する。

 その一歩は約1年半前に踏み出した。沖縄で製造したハンドラーの香港への直接輸出だ。出荷品は発光ダイオード(LED)素子の検査機。仕向け地は沖縄の方が近い。かつては沖縄で最終検査できず、金沢市の親会社に送り、関西から客先に出荷していた。

 しかし通関などのノウハウを習得。念願の初輸出となった。アジアに近い立地と那覇空港の物流網、空輸費の補助など、沖縄の利点を生かせるようになった。16年度には約70台を製造、出荷した。

 制度の恩恵は大きい。ただ、林部長は「人材がいたからできた」と強調する。地元採用の社員は熱意を持ち、親会社に提案もする。新たな生産移管が決まり、設計担当の採用も進めている。既存品だが「製造手順を見直し、価格競争力を持たせられる」。人件費でなく技術でコストを削る。「沖縄の目玉」になることが親離れの次の一歩だ。

■企業概要■
◇企業名=沖縄先端加工センター◇本社=沖縄県うるま市◇代表者=吉道義明社長◇製造品=金属部品、半導体製造装置


#2 アジアのセントラルキッチン「アンリッシュ食品工業」

日刊工業新聞2017年6月7日

三苫 能徳

三苫 能徳
06月08日
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「工業統計に数字が載るようになった」。
記事中の賃貸工場エリアの製造業関係者から聞いた言葉です。新たなモノづくりを始めたことで、それまで計測されていなかった項目にわずかながら変化が表れたと嬉しそうに話してくれました。
このエリアでは、中には撤退する企業もありますが、製造業が着実に増加していることは確かです。この連載ではその成功事例たる4社を紹介するつもりです。

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