なぜ日本は「第4次産業革命」を構想できなかったのか

自発的な「カイゼン」が水平展開に支障

 IoT(モノのインターネット)による製造業の高度化を目指す動きを主導するのはドイツや米国だ。だが日本も1990年代、ITを活用したスマートな製造業「インテリジェント・マニュファクチャリング・システム(IMS)」を提唱し、国際プロジェクトへと導いた時期があった。

 「一度はIMSで世界を主導した日本が、なぜ第4次産業革命を構想できなかったのか」―。経済産業省の糟谷敏秀製造産業局長らはこんな疑問を抱く。

 この疑問について経産省のヒアリング調査で浮かび上がってきた仮説は、官民の一体感の欠如だ。ドイツではフラウンホーファー研究機構などの機関がIMSの成果を一般化し、さまざまな企業に応用しやすい形で示した。

 かたや日本では、成果は企業や大学ごとに持ち帰られ、成果の水平展開に発展しなかった。ましてやインダストリー4・0のような国家全体を貫くコンセプトは生まれなかった。

 IoTによる「つながる工場」が最大限効果を出すには、あらゆる工場をつないでビッグデータ(大量データ)を収集し、分析することが不可欠だ。しかし、企業内でも工場や部署をまたいだ水平展開は難しい。特に「カイゼン」など現場の自発的活動に依存しすぎると水平展開に支障がでる。

 「同じ企業の同じ地域で同じ加工を指しているのに、工場ごとに言葉が違う」―。経産省の「スマート工場実証事業」で基盤システム構築の委託を受け、茨城県内の工場間でデータ連携を試みた日立製作所。「言葉に揺らぎがあり、データの互換性の確立に苦労した」と、堀水修IoT推進本部担当本部長は振り返る。

 そこで日立は、言葉の意味を統一する「言葉の名寄せ」を進めた。いまは、工場間の壁を乗り越えつつある。さらにニコンやブラザー工業、三菱電機との間で、工場間のデータ連動も目指している。企業内から、企業間の取り組みへの波及が、日本のIoTの成功のカギを握る。

 縦割りの打破は、政府にも求められている。経産省は3月、日本の産業がIoTで目指す姿「コネクテッド・インダストリーズ」をまとめた。

 だが、その1年前には総合科学技術・イノベーション会議が超スマート社会「ソサエティー5・0」を提唱。「新しい概念が次々に出てきて戸惑っている」と、一部では困惑の声もあがる。日本が世界を主導するには、工場間や省庁間の縦割りの打破は待ったなしだ。
               

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日刊工業新聞2017年6月7日

八子 知礼

八子 知礼
06月07日
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 かつての高度成長期は「カイゼン」で済んだかもしれないがすべてが繋がるIoTの世界観では、目の前の自分の担当範囲だけ、自部門だけ、自社だけという局所最適化がボトルネックになる。日本の現場の真面目さが逆に弱さとなったということ。
 複数の組織や会社を串刺しにした全体最適化では目指すビジョンやなりたい姿が共有されていなければ同床異夢のまま空回りする。各社においてそれが共有されているか、それを目指すための活動となっているかが問われよう。

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