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「東芝メモリ」売却交渉、WDに契約違反リスク浮上

「正当な理由なく保留してはいけない」
「東芝メモリ」売却交渉、WDに契約違反リスク浮上

WDのミリガンCEO(左)と東芝の綱川社長

 半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐる東芝と米ウエスタンデジタル(WD)との意見対立は、両社の合弁会社の持ち分を子会社に移転することの契約上の是非が焦点の一つ。これまでWDが東芝の契約違反を主張してきたが、WDも違反を指摘されるリスクを抱える。対立が先鋭化する火種になりかねない。

 東芝とWDは合弁会社によりメモリーを生産する。東芝はメモリー事業売却の手続きの一環として、合弁会社の持ち分を東芝メモリに4月1日付で移転した。WDはこれを契約違反と主張し、国際仲裁裁判所に訴えた。

 両社の合弁契約では「合弁会社持ち分の子会社への移転には、相手の同意が必要」と規定している。ただ、東芝は今回のケースは、メモリー事業を第三者に売却し「支配権の変更」が生じることを前提に、その過程で子会社に持ち分を移転するため、相手の同意は不要との認識を示す。

 しかし東芝は3日、持ち分を本体に戻した。WDの仲裁裁への訴えの根拠をなくし、入札の阻害要因を排除する狙いとともに、業界関係者は「『今回のケースは相手の同意不要』という解釈が認められないリスクを排除する目的ではないか」と指摘する。

 合弁契約では、持ち分の子会社への移転に関する同意について「正当な理由なく保留してはいけない」という記載もある。反対する正当な理由がWDにないとすれば、今度は持ち分を本体に戻し“潔白”になった東芝が「WDの契約違反を指摘する可能性もゼロでない」(業界関係者)との声が上がる。

 契約違反が認められた場合、相手の持ち分を割安で買い取れる決まりになっており、対立が先鋭化すれば両者の関係が泥沼化するのは必至だ。
                
日刊工業新聞2017年6月5日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
 東芝メモリの売却を巡り、WDは経営権を握る形で買収する意向を示す。東芝は独占禁止法の審査が長引くリスクなどを理由に反発する。ただライバルの韓国サムスン電子が、猛烈な勢いで設備投資に動く中、東芝とWDの間で協業関係を早期に正常化したいという認識は共通する。WDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)が今週来日し、東芝幹部と会談する。WD関係者は「日本のメモリー産業が恒久的に発展することが重要。それを実現するためのソリューションを提示する」と話す。一方、東芝はWD出資は抑えたいというのが基本姿勢。複数の関係者によると一時はWDが歩み寄りを示した。今週の会談で落としどころは見つかるか。

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