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型式証明を取得、パリ航空ショー出展も正念場続く「MRJ」

設計変更完了に向け一歩一歩、量産時期は不透明
型式証明を取得、パリ航空ショー出展も正念場続く「MRJ」

ANA仕様の試験5号機など4機の製造工程(三菱重工業提供)

 三菱重工業と米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)は、三菱重工グループで開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」に搭載するP&W製のエンジン「PW1200G」が米国連邦航空局(FAA)の型式証明を取得、MRJの商業運航に向け、PW1200Gの信頼性が認められた。PW1200Gは約6000時間の運転で性能、耐圧、耐荷重などのデータを取得し、15種類以上の試験に成功した。

 さらに北米におけるMRJの機体MROサービス(メンテナンス、リペア、オーバーホール)のパートナーとして、「HAECO Americas」と「PEMCO World Air Services」の2社と契約を結んだ。

 また6月19日からフランス・パリ郊外のル・ブルジェ空港でで開かれる世界最大級の航空宇宙産業展「パリ国際航空ショー」に試験機を出展する。飛行試験3号機を持ち込む計画で、ローンチカスタマーである全日本空輸(ANA)のカラーリングに米国で塗り直し、客室の内装を変更して航空会社やリース会社など関係者向けに公開する。

 4月に就任した三菱航空機の水谷久和社長は、今後の開発計画については秋までとする設計見直しを「必ず成し遂げる」と強調。増員した外国人技術者の知見を生かし、「当面の開発はうまくいく」(同)と手応えを示す。延期の原因となった電気配線はこのほど作業のパートナーとして「Latecoere Interconnection Systems」を選定した。

 一方、量産計画について水谷社長は「17年の時点では見えず、まだ時間がかかる」という。愛知県営名古屋空港(愛知県豊山町)近くの最終組立工場では、量産初号機の納入先であるANA仕様に塗装された試験5号機など4機が2本のラインに並び、組み立て作業が進む。国内での飛行試験に投入する予定だった5号機は、当面飛行しない見通しだ。

 延べ床面積約4万4000平方メートルの最終組立工場には最大12機を置けるが、4機では空きスペースが目立つ。4機は米国で飛行試験中の試験1―4号機に続く機体。

 ただ、4機の今後は不透明だ。試験5号機以外の3機は量産機として製造していたが納入延期に伴い、試験機に転用される見通し。変更内容を反映した機体で試験したいからだ。

 量産機から試験機に転用された後についても流動的だ。三菱航空機の岸信夫副社長は「試験機専用にするか、試験後に顧客に納入するか検討している」と話す。

 また、納入延期前には20年に月産10機まで増やすと掲げていた量産計画についても、「計画全体の遅れに伴って見直しており、現時点でいつ開始とは言えない」(高口宙之三菱重工MRJ事業部長)状況。

 型式証明は取得したものの事業の正念場は続く。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
パリ航空ショーには三菱重工の宮永社長や三菱航空機の水谷社長、ANAホールディングスの篠辺副会長が出席を予定という。どんな発言が出るか注目したい。ANAのほか32機を確定発注したJALなど7社から計427機を受注している。確定受注が約半数の233機で、残りはキャンセル可能なオプション契約が170機、購入権契約が24機。顧客との商談もどう動き出すか。

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